『答えは、まだ』
「付き合ってください。」
可愛がっていた後輩から突然告白を受けた。
正直嬉しかった。けれどこれは家族に向ける愛のようなもので後輩が求めていたものじゃない。
それを知ってて付き合っても君に申し訳ない。
だって君は荷物を持ってくれたりかっこいいとこあるし、
私より大きいのに甘えてくる可愛らしさもある。
私が知ってるんだ。同じクラスや同級生からは君の良さをもっと知ってるだろう。
だから...
「ごめん、1週間だけ待ってくれるかな?」
君のことを考えるか私のためを取るか
まだ答えは伏せさせて欲しい。
それに今は高鳴る心臓を抑えるのに必死だ。
語り部シルヴァ
『センチメンタル・ジャーニー』
家のガス栓閉めたっけなあ...
窓とか玄関の戸締りも今不安になってきた。
新幹線が静かに景色を置いていく中、
ふと家を出た瞬間の記憶を巻き戻していた。
相変わらずこういう所がダメなんだろうなあ。
本来彼女と行くはずだった旅行を行き先と予定を
全て変更して一人で行くことにした。
いわゆる傷心旅行というやつだ。
こういう旅行は初めてで
正直まだ別れてショックを受けている感覚が無い。
この旅を終えた時自分に何かが変わってるのだろうか...
降りる駅まではまだ時間がある。
楽しみすぎて眠れなかった分眠気が今やってきた。
今はこの旅を楽しもう。
心地よい座席と睡眠不足の体は
自然と瞼を閉じて眠りについた。
語り部シルヴァ
『君と見上げる月...🌙』
昼頃まで寝ていた。
もっと寝ていたいがこれ以上寝ると
夜に眠れなくなるということで頑張って起きた。
それに今夜は君と夜に散歩する予定だ。
随分と秋が深まって暑さを感じることが少なくなってきた。
熱帯夜から涼しい夜へと変わって
こうやって二人で散歩することも増えてきた。
風に吹かれてススキがサラサラと音を立てて揺れる。
暑さがマシになってよかったとか
冬でもアイス食べるんだろうなあとか
手を繋ぎながら雑談を交えてのんびり歩く。
ふと君が足を止めて空に向かって指をさす。
見上げると月が優しく輝いていた。
しばらく二人で見上げていた。
涼しくなっても繋いでいる手から伝わってくる熱は
いつまでも熱いままだった。
語り部シルヴァ
『空白』
ふと過去の日記が見たくなった。
我ながら丁寧な字でその都度あったことが書かれている。
ある時は警報で学校が無かったことや
テストの内容が前日に山勘で勉強したところが
出てきたことや幼馴染と遊んだりなど
我ながら事細かに書いてくれてある。
そんなこともあったっけ...
と過去に浸っているとある日を境にページが真っ白になった。
ページをめくってもめくっても何も書かれていない。
次に日記が書かれていたのは2ヶ月後だった。
飽きたのならもっと早めに終わっているはず...
なんだかモヤモヤする...親に聞いてみると親は
鬼の形相で私の両肩を掴み日記を見た事に対して叱責した。
親がここまで怒るのを見たことは数少ない。
だからこそ親がそこまでして
隠したいことがあるのだろう。
日記にヒントが無いかと探してみる。
空白になる前日は幼馴染と川へ遊びに行ったと書いてある。
そんなことしたっけ...私は泳ぐの嫌いなのに...
そういえばいつから泳ぐの嫌いなんだっけ...?
語り部シルヴァ
『台風が過ぎ去って』
屋根や葉っぱから雨粒が落ちて弾ける。
水溜まりが雨粒を受けて波紋が広がる。
風は少し湿ってるが涼しさを感じる。
窓を開けるとひんやりした空気が部屋の湿気を払う。
黒い雲は吹き飛んで少し背の低くなった青空が顔を出す。
太陽は...まだ暑そうだ。
深夜から続いた台風は昼過ぎになってようやく通り抜けた。
ずっと暑苦しい空気を放っていた外は雨で随分と冷たい空気を纏っている。
今日は気分がいい。コーヒーでも淹れよう。
アイスコーヒー、いやホットコーヒーにしよう。
ホットの温もりが美味しくなり始めるかもしれない。
語り部シルヴァ