語り部シルヴァ

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8/20/2025, 11:44:07 AM

『きっと忘れない』

「私の事なんかさっさと忘れてね」
あの教室で鼻声の君は言う。
夕焼けが世界を塗り潰す中悪かった視界に映ったのは
大粒の涙ボロボロと流して困ったように笑う君。

抱きしめたい。その一心で手を伸ばすも
君に触れることなく見慣れた天井が視界に広がる。
あぁ、またあの夢か。
学生時代の一番記憶に残ったワンシーン。

入学当初から仲良くなって付き合って...
そして卒業式の学生最後に別れを告げられた。
あの時はカッコつけて「わかった。」
とだけしか答えなかった。

本当はすごく嫌だった。
別れを切り出す理由とか
別れるのは嫌だとか
言いたいことは言えばよかった。

その後悔が、今でも夢に見る。
「夢ならさっさと覚めてくれ。」
ため息と独り言がこぼれて片手で顔を覆う。
目覚めたはずの世界が夢のように感じる。

これから何年先も忘れることはない。
せめて君の笑顔を記憶に残したかった。

語り部シルヴァ

8/19/2025, 10:40:54 AM

『なぜ泣くの?と聞かれたから』

母は昔から私が感情的な一面を見せると
「なんでそう思ってるの?」と問いかけてくる。
最初こそそりゃこっちのセリフだと思った。
今思えば自分の感情的な部分を
説明できるようにしようとしていたのだと思う。

結果はというと私は感情的な一面を隠すのが上手になった。
仏頂面とか無表情とか言われるようになったけど
私が一番生きやすい方法がこれに落ち着いた。

母に何を言われても感情的にならなくなった。
母は後悔してるのかどうでも良くなったのか
私が無表情になってからは「なぜ?」
と問いかけてこなくなった。

ある日母が我慢の限界だったのか
怒りに任せて私を怒鳴ってきた。
私はただただ落ち着いて
「なんで怒ってるのに泣いてるの?」
と問いかけた。

残念ながら母は答えられず、
私は次の日家を出ることにした。

語り部シルヴァ

8/18/2025, 11:03:10 AM

『足音』

次は移動教室だ。休憩時間の中次の教室へと目指す。
君は先に行ったかな...?
キョロキョロと視線を動かしながら歩いていると
人混みの中に君を見つけた。
一人で歩くその背中も小さくも凛としていて可憐だ。

ふといたずらしたくなって君の後ろから手で視界を塞ぐ。
君は仕方なさそうにため息をつく。
「全く...君でしょ?」
自信ありげに答えられてパッと手を離す。

「すごい...よくわかったね?」
「君の足音をどれだけ聞いていると思ってるの?」

そう言って振り向いた君は背伸びをして
頭をポンポンと軽く叩く。
この人混みの中僕の足音を聞いていた...?
そんなまさかと思いつつも
君ならやってみせそうだなあと思ってしまう。

「さ、早く行こ。休憩時間終わっちゃう。」
足を進める君の声が遠くなっていくのを感じて
慌てて君の隣を目指して急いだ。

語り部シルヴァ

8/17/2025, 10:48:43 AM

『終わらない夏』


部屋の暑さで目が覚めて外に出る。
入道雲、ギラギラしてる太陽、
足から伝わるアスファルトの熱。
日陰で休んで家に帰ってお風呂で汗を流して
クーラーの効いた部屋でご飯を食べる。

こんな夏をずっと繰り返している。
最初こそ焦燥感に駆られていた。
けれどそんなの夏の暑さで考えてる余裕も無くなった。

本当なら何かしら動かなきゃいけない。
わかってる。わかってるけど...
全部...夏のせいだ。

何も無い何も感じない私の夏はずっと
終わらないのかもしれない。
こんな夏なら...早く終わらせたいんだけどね。

クーラーが日中に溜まった熱をどんどん冷ましていく。
日付はとっくに変わっている。
クーラーを切ってもう寝よう。

また...最初に戻るんだろうなあ。

語り部シルヴァ

8/16/2025, 11:44:30 AM

『遠くの空へ』


「よし...じゃあやろか。」
おじいちゃんの言葉で
ゴロゴロしていた体を起こして川へ向かう。
川についてお盆でお供えしていた花をそっと川に流す。
昔からの習慣だ。

おじいちゃんはおばあちゃんを亡くしてから
ずっと一人で暮らしている。
歳は自分の年齢に六十を足した歳。
もう随分と歳をとっているがイメージする老人よりも
背骨は真っ直ぐだしボケてはいない。

今日はそんなおじいちゃんの奥さん...
おばあちゃんのお盆を終わらせた。

おじいちゃん曰く
「お坊さんにお経を呼んでもらって
孫の顔も見れたからきっと満足して帰っただろ。
帰る時に何も無いのは寂しいから
こうやって川を使って花を届けるんだ。」
とのこと。

おばあちゃんは俺が物心付く前に
亡くなっちゃったからどんな人かは覚えてない。
でも俺の顔を見て満足してくれるなら毎年会いに来るよ。

どうかあの綺麗な花がおばあちゃんに届きますように。
流れていく花におじいちゃんも俺も手を合わせて目を閉じた。

「ほな...帰ろか。」
おじいちゃんに返事して川を背にして歩き始めた。
バイバイおばあちゃん。また来年。

語り部シルヴァ

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