語り部シルヴァ

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『きっと忘れない』

「私の事なんかさっさと忘れてね」
あの教室で鼻声の君は言う。
夕焼けが世界を塗り潰す中悪かった視界に映ったのは
大粒の涙ボロボロと流して困ったように笑う君。

抱きしめたい。その一心で手を伸ばすも
君に触れることなく見慣れた天井が視界に広がる。
あぁ、またあの夢か。
学生時代の一番記憶に残ったワンシーン。

入学当初から仲良くなって付き合って...
そして卒業式の学生最後に別れを告げられた。
あの時はカッコつけて「わかった。」
とだけしか答えなかった。

本当はすごく嫌だった。
別れを切り出す理由とか
別れるのは嫌だとか
言いたいことは言えばよかった。

その後悔が、今でも夢に見る。
「夢ならさっさと覚めてくれ。」
ため息と独り言がこぼれて片手で顔を覆う。
目覚めたはずの世界が夢のように感じる。

これから何年先も忘れることはない。
せめて君の笑顔を記憶に残したかった。

語り部シルヴァ

8/20/2025, 11:44:07 AM