語り部シルヴァ

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8/12/2025, 10:56:51 AM

『真夏の記憶』

いつもの通学路に屋台が並ぶ。
制服姿の友達はみんな私服や浴衣を着ている。
空は屋台の煙が薄く伸ばされ提灯がぼんやりと照らし、
雲が近くまで降りてきているようだ。

カステラ、焼けた鉄板に引かれた油、
虫除けの匂いがどこかしらから匂う気がする。

...昔の夏の思い出。
それだけで早く覚めたい気分だった。

「やっぱり人がいっぱいだよね。」
限りなく再現された声が聞こえて振り向く。
鮮やかな紅色の浴衣を着た君が隣に立っていた。

隣に映える赤い華。
この夢に咲く自分の罪。

語り部シルヴァ

8/11/2025, 11:02:57 AM

『こぼれたアイスクリーム』

「私...あと一ヶ月の命なんだ。』
唐突に彼女が告白する。

エイプリルフールにしては早いよ!?
とか
しっかりしろ!エアコンとアイスを食べた我々ならまだ...!
とかふざけた方がいい。
なのにいつも軽く弾む口は全く動かない。

おい、彼女が暗い話をしてるんだ。笑わせろ。
笑顔にさせるためにこのムードを...!
いや...無理だ。彼女の真剣な表情を俺には崩せない。

「ねえ、大丈夫?」
彼女の言葉にはっとする。
すごく、ものすごく時間が止まっていたようだった。
さっきまで手に持っていたターコイズグリーンに
茶色が混ざった宝玉はドロドロに溶けて俺の腕から滴る。

「どうやら...アイスにも刺激が強すぎたみたいだ。」
結局、君を困った顔にしか今の俺には出来なかった。

語り部シルヴァ

8/10/2025, 10:45:09 AM

『やさしさなんて』

私は優しさなんて嫌いだ。
優しくするから付け上がられてバカを見る。
優しさを本心と気付かず勝手に裏切られたと
勘違いするバカができる。
優しいねって褒める所がないから
代名詞を困り顔で言ってくる。

沢山の優しさで沢山傷ついた人を見てきた。
人を傷つけるなら私はそんなのいらない。
そんなのが無くても私は生きていける。

それと...

「そっか、周りを傷つけまいと考えてあげてるんだね。
君もすごく優しいじゃん。」

私の考えを勝手にいい方向へ解釈して決めないで。
自分から距離を置くのも
お前みたいなやつに変に解釈されたくないからなんだ。

だから私は優しさなんて嫌いなんだ。

語り部シルヴァ

8/9/2025, 11:34:03 AM

『風を感じて』

今、風を感じてる。
全身を吹き抜ける風が汗ばんだ肌を撫でる。
暑さの中に涼しさが混じる。

暑いけど...こういうのはいい。
夏でしか感じられない。
熱が、風が、汗が。
夏が自分の体を燃やす。

...夏のことを考えると余計に暑くなる。
付けていた扇風機の風力を更にあげる。

最大風力。
あー...涼しい。
今でしか感じられない風は暑さも吹き飛ばしてくれた。

語り部シルヴァ

8/8/2025, 10:44:14 AM

『夢じゃない』

スマホの通知で目が覚める。
"おはよ。起きてる?"
いつになく脳が目覚めて
スマホをポチポチと打って返信する。

"おはよ!今起きたところだよ!早起きしたの?"
時刻は九時過ぎ頃。思った以上に寝ていたようだ。
伸びをしているとまたスマホが鳴る。

"ううん、七時頃起きたよ。
結構ねぼすけなんだね(笑)"

なんだか恥ずかしくなってくる。
これから生活習慣見直そうかな...
なんて思っているとふと現実味が増してくる。
寝起きの感覚もクーラーの冷たさも
窓の眩しさもきちんと感じる。
ここまで来たら頬をつねる必要は無いだろう。

「...ほんとに付き合えたのか。」
夢じゃない。こんなに朝起きて
嬉しさが込み上げてきたことはあっただろうか。
今ならなんでも出来そうだ。
もう一度思い切り伸びをして
君への返信を考えることにした。

語り部シルヴァ

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