語り部シルヴァ

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6/18/2025, 10:24:29 AM

『糸』

君と私はずっと繋がっている。
昔君がいじめっ子から助けてくれてから私たちは始まった。
喧嘩したりもあったけど、私たちは絡み合えば合うほど
仲良くなっていく気がする。

それこそ腐れ縁かもしれない。
けれどどんな仲であっても私たちは離れられないと思う。
こんなこと言えば君はなんて言うだろうね。
きっと腐れ縁のことに
"そんなことない!"って全力で否定したり、
"だな。ぜっっったいに切れない何かで結ばれてる...
腐れ縁じゃなくて鎖縁ってね.."
なんてジョークを挟んでフォローしてくれるだろう。

実際に聞けばいいかもしれないけど、そんなことはしない。
君の言葉を借りるなら鎖縁かもしれないこの関係は
少しの歪みでも切れてしまうかもしれないから。

君と私は鎖のような、糸のような関係だから...

語り部シルヴァ

6/17/2025, 10:14:53 AM

『届かないのに』

夕日に向かって手を伸ばす。
届きもしないのはわかってる。
それでも僕含めみんな通る道だと思ってる。

あの夕日はなんだろうか。
夢なのか憧れなのか...
僕はみんながやってるからやってみただけ。
夕日の逆光で手の輪郭が鮮明に見える。
部活のせいもあって輪郭はボコボコだ。

伸ばした手をギュッと握る。
夕日を掴めるわけもなく
ただただ暑くなった空気を掴んだだけだった。

語り部シルヴァ

6/16/2025, 10:58:23 AM

『記憶の地図』

棚を掃除していると折りたたまれた紙がカサっと落ちてきた。
一瞬身に覚えなのないものだったが
持ち上げようと触れた瞬間記憶が蘇る。

紙を広げると自分ともう一人が書いた地図だった。
お気に入りのカフェや良く行くゲーセン。
お揃いの服を買いに行った洋服屋。

2人がどれだけ歳をとってもこの思い出を忘れないように。
そこで彩られた日々を色褪せないように...

今じゃなんの意味も無い紙切れだ。
躊躇したが紙をぐしゃぐしゃにして
ゴミ箱に捨てて掃除を続けた。

語り部シルヴァ

6/15/2025, 10:54:06 AM

『マグカップ』

ガシャンと大きな音を立ててマグカップが割れる。
飲み物は幸い入っていなかったが
陶器の破片がかなり散らばった。
小さい頃からずっと使っていたから
そろそろ壊れるかなと思っていたが本当に急に壊れた。

陶器の欠片を一つ一つつまみあげる。
なんだか今まで使ってきた思い出を拾い集めている気分だ。
夏にはアイスコーヒーを、寒い日にはココアを。
何気ない日常の日々の中で嗜好品を味わせてくれた。

初夏なのに冷たくなった陶器は
まるで宿っていた命の終わりのような冷たさだ。

「...ありがとう。」
そう思ったから不意に言葉が零れた。

明日からのマグカップを買いに行かなきゃな...

語り部シルヴァ

6/14/2025, 10:52:45 AM

『もしも君が』

ねえ、もしも君が今辛い思いをしているなら僕は
君の力になれるかな。
飛び降りたいなら一緒に飛ぶし泣きたいことがあるなら
一緒に泣きたいな。

ねえ、もしも君が今幸せなら僕は
君から素敵な話を聞けるかな。
君の笑顔が好きだから君の幸せな話なら
どんなことだって聞きたいな。

ねえ。もしも君が今生きていたら...
僕は今も悔やむことなく君の隣にいれたかな。
あの日喧嘩別れさえしなければ君と今も
放課後の帰り道に買い食いできたかな。

ねえ...もしも君がもう僕のことを許してくれているのなら
僕はこれから幸せに生きていいのかな。
でも絶対そんな日はやってこない。
これからも僕は君のことを忘れず、
償う日々を送っていくつもりだから。

そんなもしもを考えても君が隣に現れることは無いけどね。
君のお墓の前で静かに手を合わせる僕の頭の中は
ずっとうるさいままだ。

語り部シルヴァ

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