『さあ行こう』
財布に飲み物...あとは匂いがキツくない制汗剤。
これから自転車で炎天下の中恋人の家に行く。
徐々に暑くなってきて自転車で行くのも一苦労だ。
大人になれば車で涼しげに行くことができるのかな...
なんて夢を見ながら準備をする。
服装もなるべく軽装で。じゃないと汗が
すごいことになってしまう。
会いたいから自転車を急いで漕いでしまうのも
気をつけないと...
準備を整えてスマホで天気予報を確認。
最高で33度...猛暑日にしては早すぎるな。
ため息をついてスマホをズボンのポケットに入れる。
ゆっくり深呼吸して陽の光で真っ白に輝くドアを開ける。
さあ。行こうか。
語り部シルヴァ
『水たまりに映る空』
灰色の空、黒い煙をあげる煙突たち。
洗濯しても落ちない汚れを纏った作業服で今日も仕事。
ここ数年ずっと空は曇りっぱなし。
雨が降っても雨が止んでも空は灰色のまま。
今日も雨が上がった。今日こそはと願いつつ外に出たが案の定空は色を忘れていたまま。
あたりに水たまりができていて、少し湿気った空気。
水たまりを覗くと反射した空が映し出されている。
水たまりに広がる何かが反射した空を虹色に染める。
現実の空もこれくらい鮮やかに...
なんてもしもを願うよりも仕事に集中するしか
今を生きる方法が思いつかなかった。
語り部シルヴァ
『恋か、愛か、それとも』
最近ある男が気になっている。
ふとした瞬間にその顔を思い出してはため息が出る。
何度断っても奢ってくるしプレゼントを持ってくる。
申し訳ないから断ってるんだけどなあ...
あ、あと他の女の人と話しているのを見かける度に謝って
「そんなつもりは無いんだ。ごめんね」と言ってくる。
友人に話してみればみんな口を揃えて
「それはアレだね...」と答える。
あの男をの言動を思い返してみる。
最初勘違いをした私がバカみたいに思えてきた。
今日も別の友人に相談してみた。
「そりゃああんたのそれは殺意だでしょ。」
「あーやっぱり?」
私の勘違いは本当に恥ずかしいものだった。
語り部シルヴァ
『約束だよ』
「おじいちゃん...!」
「わしはもうダメじゃ...年は取りたくないものだな...」
ベッドの上のおじいちゃんはいきぐるしそうにわらう。
わたしはなにも言えないままおじいちゃんの手を
ぎゅっとにぎることしかできなかった。
「なあ可愛い孫よ、わしが死んだら悲しんでくれるかい?」
「もちろんだよ!約束!!でもしなないで!」
おじいちゃんの手をさっきよりつよくにぎりしめると
おじいちゃんはやさしくわらいながら
ねむるように目をつむった。
するとおじいちゃんのよこのきかいがピーとなる。
「おじいちゃん...?おじいちゃん!」
おじいちゃんはしんでしまった...
「まさか一日の内に家族が二人も死ぬなんて...」
「こんなことって...神様は残酷だわ。」
周りの哀れむ声がずっと聞こえる。
本当にどうしてこんなことになったんだろう...
そう思っていると夫が前でマイクを
持って涙を我慢する声で話し始める。
「えぇと...みなさん本日は祖父の○○と
娘のかなによる葬儀を始めたいと思います。」
語り部シルヴァ
『雨上がり』
傘に雨粒が弾ける音が止む。
傘を閉じて空を見上げると雨が降りやんだ。
さっきまで聞こえた雨の音が無くなっただけで
すごく静かに感じる。
雲は太陽の光がうっすらと差して
夕暮れの黄金色に染まっている。
雨の匂いと湿気った風は残っているがさっきよりも
気分が文字通り晴れたような気がする。
子供の頃ならスキップしていたかもしれない。
しかし...暑いな。
雨で幾分が気温が下がっていたのが湿気と
日光で蒸し暑くなっていく。
もう十七時過ぎなのにこれから暑くなっていくのかと思うと
さっきまでの雨が恋しくなった。
この蒸し暑さを流してくれるような激しい雨を。
語り部シルヴァ