語り部シルヴァ

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5/5/2025, 10:31:24 AM

『手紙を開くと』

「手紙...?」
仕事帰りにポストを開けると見知らぬ封筒が入っていた。
封筒...の割には厚みがある。
ストーカーからの手紙の線はない...
人気者になれるほど自分はモテない。

「...?」
宛名は...無い。
なのに僕の住所を知っているのなら家族ぐらいだろう。
だが家族なら実家の住所を書くはず...
部屋に戻って封筒を適当なところに置いてことを済ませる。
ご飯や家事...お風呂を終わらせたあと、
本でも読もうかと手を伸ばす。

視界の先にさっきの封筒が入る。
...することも無いから開けてみる。

押し込められていたかのように中身から手紙が溢れてくる。
溢れ出した中からやっと一枚目を見つけた。

「差出人は...俺?」
"拝啓 数年前の俺へ"から綴られた文章が
そこから始まっていた。
始まりの挨拶に自分しか知らないことばかり
書かれていたから詐欺の類でも無さそうだった。

ちゃんとした自分からだと信じて
手紙を読み始めた。

語り部シルヴァ

5/4/2025, 10:32:01 AM

『すれ違う瞳』

すれ違った人に足を奪われる。
その人の瞳は普通の目で周囲の人と変わらない。
けど、覗き込めば全てを飲み込まれてしまいそうで...
いわゆる一目惚れだろう。

家に帰ってもその気持ちは変わらなかった。
一瞬のあの光景がずっと脳裏に残っている。
あの人の目をずっと見ていたい。そんなふうに思ってしまう。
あの瞳のことを考えれば動悸がする。顔が火照る。
作業はなんにも手付かずになってしまう。

あの時声をかければ良かったと酷く後悔している。
また同じ場所に行けばいつかは会えるだろうか。

ため息が止まらない。
こんな恋は初めてでどうすればいいかもわからない。
ただ...あの瞳を思い出してはため息をつくことしかできない。

語り部シルヴァ

5/3/2025, 10:25:48 AM

『青い青い』

ここの教室からの景色を見ていると
色々と懐かしく思うことがある。
始業式の緊張感、教室での告白、文化祭...
数十年前の記憶なのにこうも鮮明に再生されるものなのか。
教員免許を取って、地元の高校の教師になった。
まさか担当のクラスが当時の自分が入ったクラスと
同じになるとは思わなかった。

壁の質感とか床の模様とか少し風化しているが
それも変わってない。
あの頃の自分はこうなるとは思ってなかっただろう。
なにせあの頃の自分は先生が嫌いだった。

綺麗事しか言わない、一人一人見ているようで
見ていなかったような先生しかいなかったからだ。
もっとこうして欲しい、あぁして欲しい。
そんな思いも内気な自分は言えなかった。

だから自分が先生になってやって欲しかったことを
やり遂げようと決めた。
少しでも生徒が青春を謳歌できるような先生に...

語り部シルヴァ

5/2/2025, 10:32:17 AM

『sweet memories』

これは初デートの時に初めて手を繋いだ写真。
これは文化祭の時に友達に茶化されながらも
撮ってもらった写真。
これは...

スライドすればするほど溢れかえるのはキミとの思い出。
喧嘩もしたけど、それ以上にキミと幸せな時間を過ごした。
抱きしめられた時のキミの温かさとか
デートの時の不器用ながらもエスコートしてくれる姿に
感じた愛らしさとか...

どれも素敵な思い出だ。
思い出を噛み締めるように一枚一枚タップして選択する。
写真を見る度にその時の思い出が脳裏に再生される。
あー...終わっちゃうなあ。
名残惜しいと感じてしまうが全部この場の感情だ。

全て消しますか?と携帯に問われ、
一瞬躊躇ったがはいを押す。
容量が軽くなったのかスラスラと動くスマホ。

さよなら。私の初恋。
甘いキラキラ日々は一瞬にして
真っ黒な苦い思い出に様変わりしてしまった。

語り部シルヴァ

5/1/2025, 10:38:20 AM

『風と』

下り坂で自転車のペダルから足を離す。
どんどん加速して受ける風は勢いを増す。
人や車が来るのが少ないここだからこそできること。

春の日差しで火照った体が風によってどんどんと冷えていく。
心地いい...鳥やバイカーはこんな気分なんだろうか。
この風を受けたい。もっともっと風を浴びたい。
風といっしょに春を走り抜けたい。

けれど坂道は緩やかになっていく。
速度がどんどん落ちていく。
そしてあっという間に自転車は
ピタリと止まってしまった。

自転車から降りると風は僕を置いて
どこかへと吹いていってしまった。

語り部シルヴァ

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