語り部シルヴァ

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『風と』

下り坂で自転車のペダルから足を離す。
どんどん加速して受ける風は勢いを増す。
人や車が来るのが少ないここだからこそできること。

春の日差しで火照った体が風によってどんどんと冷えていく。
心地いい...鳥やバイカーはこんな気分なんだろうか。
この風を受けたい。もっともっと風を浴びたい。
風といっしょに春を走り抜けたい。

けれど坂道は緩やかになっていく。
速度がどんどん落ちていく。
そしてあっという間に自転車は
ピタリと止まってしまった。

自転車から降りると風は僕を置いて
どこかへと吹いていってしまった。

語り部シルヴァ

5/1/2025, 10:38:20 AM