語り部シルヴァ

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3/15/2025, 10:28:02 AM

『心のざわめき』

三年生が卒業して春休みがやってきた。
...と言っても運動部の私はほぼ毎日
学校に来て部活をしている。
三年の先輩は夏頃から引退したから人数的には変わらない。
けれど春休みの学校はやけに静かでどこが寂しげだ。
まあ、私の所属している部活はそんなに
騒がしくするものじゃないから静かな方が集中出来る。
けどなんだろう。この静けさから胸騒ぎを感じる。

今は休憩中でご飯を食べてひとり青空を見上げていた。
「春になってきてるよね。どんどん暖かくなってくる。」
物思いにふけていたらいつの間にか先輩が隣に座っていた。

「先輩...そうですね。
寒いのは好きではないので嬉しいです。」
「そっか...早く暖かくなって欲しいね。」
はい。と答えて二人で空を見上げる。
この先輩は私が部活に入ってからずっと
面倒を見てくれた世話好きで優しい人だ。

...そっか、次の春には先輩も卒業...。
ずっとそばにいてくれた先輩も離れていってしまう。

(それは、やだな...)

そんなワガママな思いを吐くのをぐっとこらえて
二人でずっと空を見ていた。
雲ひとつない青空からは優しい陽気が照らされていた。

語り部シルヴァ

3/14/2025, 11:25:52 AM

『君を探して』

「そうですか...ありがとうございます。」
答えてくれた住民にお礼をしてその場を去る。
どうやらここにも君の情報は無さそうだ。

当たり前かもしれない。僕も初めて来た場所だ。
数年前、世界を崩壊に導いた大地震が起きた。
どこの国も壊滅寸前で、
ほぼ世紀末のような世界に様変わりした。
遠くに住んでいた君もあれから連絡が返ってこない。
移動手段を手に入れてから一目散に君のところへ向かった。
残念ながら君の目撃情報は見当たらなかった。
そこにあったのは...僕とお揃いのペアリングだけがあった。

元々1人を好む君だ。きっと1人でなんとか生きているはず...
そう信じて僕は国中を駆け回った。
そして今日。未開拓の最後の場所だった。
この国には君はいない。

...だから次は世界に行こう。
君が生きていることを信じて...

このペアリングを君に「忘れ物だよ」って言って渡すんだ。

語り部シルヴァ

3/13/2025, 10:37:21 AM

『透明』

私の幼馴染は何を考えているかわからない。
急に私を連れ出して花火を見に行こうと言い出したり、
私からの誘いをどれだけ寝れるか挑戦したいと
言って断ったりする。
この前もお気に入りの野良猫を見つけたから一緒に
おやつあげよと言って私の返事を待たずして走っていった。
毎日振り回されてばかりだ。
本心でやっているのかそれとも
ただ何も考えずにやっているのか...掴みどころのない奴だ。

ただわかるのは悪気があってやってるわけじゃない。
現に私は嫌悪感を感じないしなんなら楽しさを感じる。
私の知らない世界に連れて行ってくれてることが
多いからだろう。

そう...例えるなら幼馴染は綺麗な水みたいだ。
濁りのない言動に掴めない本心。うん、納得だ。

なら、この水を私が土足に入って濁すわけにはいかない。
私と幼馴染。この距離感が今の心地良さを感じれるという
なら、本心かどうかなんて聞くのは野暮ってことだ。

「おーい。ちょっといい?」
ほら。またお呼びだ。
流れる水のままに任せよう。

語り部シルヴァ

3/12/2025, 11:13:42 AM

『終わり、また初まる、』

風の匂いを感じた。
暖かくて優しい匂い。春が風に乗ってきた。
3月の中旬頃ということもあって、
そろそろ暖かくなってきたのだろう。

今朝は寒かったものの、お昼のこの時間帯は
暖房も上着も要らずで窓を開けても平気なくらいだ。
雪解けのようにゆっくりと
冬が終わっていくのを感じると共に、
今年度の初めましての春がやってきた。

ポカポカと陽気に当てられてまどろむ日々を思うと
早く来てくれと願う反面、
寒さがなんだか寂しくなっていく気がする。

まだ寒さが残っているからだろうか、
暖かい日差しを受けているのに体がゾワっとした。

語り部シルヴァ

3/11/2025, 11:03:12 AM

『星』

まだ寒さが続く夜の下、手袋を忘れてしまい手をコートの
ポケットに突っ込み肩を震わせながらトボトボと歩く。
早く暖かくなって欲しい。服のかさ増しで肩こりが
酷くなったり朝の準備が多くなって嫌だ。

そのせいで少しでも早く
布団から出ないといけないのは朝から地獄だ。

ため息をつくとマスク越しにでも口から白い息が漏れた。
その白い息を消えるまで見送ると空は満点の星空だった。
「おぉ...綺麗。」
白い息があとも上を見ながら歩いていると
前方から強い衝撃を受けた。

「〜〜〜〜っ!!!」
咄嗟に頭を抱える。
寒さは吹き飛び自分の周りに星がキラキラと輝いている。

あぁもう散々だ。さっさと帰ってご飯を食べて寝よう。
ぶつけた部分を冷たい手で冷やしながら
チカチカした視界をフラフラしながら帰った。

語り部シルヴァ

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