語り部シルヴァ

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11/11/2024, 4:23:53 AM

『ススキ』

随分と遅くなってしまった帰り道。
明日は休みだから焦って帰る必要も無い。

空は晴れていて時折流れる雲が夜空と星を隠す。
のんびり歩いているとススキを見つけた。
いつも歩く帰り道なのに気が付かなかった。
ススキといえば十五夜のお月見に
添えられているイメージだった。
案外どこにも生えているのかもしれない。
十五夜の満月が目立ちすぎているから
影が薄くなっているだけだろうか。

1本引き抜こうとしたが小さい頃に手を
ズタズタにされたことを思い出して手が止まる。
いや影が薄い上に引き抜かれるのは可哀想だ。
なんて頭で言い訳しながら帰り道を歩き始めた。

ススキの擦れる音が静かな夜に添えられる。
前言撤回。ススキは充分秋の主人公じゃないか。

語り部シルヴァ

11/9/2024, 3:49:22 PM

『脳裏』

あの出来事は最悪だった。
友達だと思っていた相手に急に押し倒されて
抵抗も虚しく終わってしまったあの日。

相手からの好意がこれほど
悪い方向に向かうことがあるのかと初めて知った。
それと同時に相手を好きになることは
相手に迷惑をかけることと思うようになってしまった。
好きな人がいてもその好意が
相手を傷つけてしまうんじゃないか。
人を好きになんてなれないし、
なってはいけないとも考えるようになった。

あの日の出来事がどうしても脳裏によぎってしまう。
友人という皮を被った何かの血走った目を。
興奮して手首を強く握られたあの感覚を...

相手にそういうことをしてしまったりされる可能性が
少しでもあるのなら...

私は1人でいい。

語り部シルヴァ

11/8/2024, 11:56:12 AM

『意味がないこと』

「いつもありがと!じゃーねー!」
そう言いながら女性は手を振って人混みの中に消えていった。

「お前...人付き合いは
もうちょっと考えた方がいいんじゃないか...?」
その様子を見ていた友人は呆れたように問いかける。

「あの人結構人を都合良いように使うんだっけ?
まぁ僕は使われたと言うよりかは
好きでやったから気にしないよ。」

その返答に友人はまた呆れるもふふっと笑いながら
「お前のいいところだけどさ...」
と言いつつ最新作のゲームの話を振ってくれた。
優しい友人が隣にいてくれて嬉しい限りだ。

あの行為はこれからも周りから無意味だと言われるんだろう。
悪人に手を貸すなんてと悪態をつく人だっているだろう。

けれどこれが僕だ。
誰に言われても曲げない僕自身の"芯"のようなもの。
たとえ無意味だったとしても
やらずに後悔するよりかマシなんだ。

たとえ無意味でも、エゴでも...

語り部シルヴァ

11/7/2024, 11:37:54 AM

『あなたとわたし』

あなたはいつも手が冷たい。
でも「手が冷たい人は心が暖かい」って言ってたからあなたに抱きつくとひんやりと冷たい内に
じんわりとした暖かさが伝わってくる気がする。
少し肌荒れが見えるけど、
それが気にならないくらいあなたは綺麗。

私にハグをされるあなたはクールぶってるけど
平静を保とうとしてくれていた。
いつのあと一歩のところを我慢していたのは知っていた。
だからあえて薄着で誘ってみたりさりげなくその気にさせたのにあなたはクールぶって抑えていた。
そんなあなたの手に触れることができる私は
幸せなんだろうか。

あなたの手を借りて私の頭を撫でさせる。
冷たい手からは愛を微量ながらに感じとれる。...気がする。

あなたとわたし。2人は今日もずっと一緒にいる。
明日も、これからもずっと...

語り部シルヴァ

11/5/2024, 10:17:18 AM

『一筋の光』

お先真っ暗。
今の自分に相応しい言葉。
お金もあまりない。職も安定しない。
恋人もいない...

友達が充実している生活をSNSに投稿しているのを見かけると
自分にはどうしてなにもないんだろうと思うばかり。
友達を妬む暇があれば自分を磨けばいいのもわかっている...
けど結局何も得れないから諦める。

...ひとつ。希望のようなものがあるとするなら。
通知音が鳴りスマホを確認する。
趣味の界隈で人気者の人と連絡を取りあっている。
何気ない会話も自分の生きる力になる。

きっと僕なんかただのモブに見られているだろう...
それでも...勝手に縋らせて欲しい。

君の通知でにやける僕は傍から見てもきっと惨めだろう。
そんなことが気にならないくらい君の存在は大きいんだよ。

語り部シルヴァ

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