語り部シルヴァ

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10/24/2024, 10:23:52 AM

行かないで

私は幸せだ...彼氏が向かいに居て
今欲しいものが向こうから流れてくる。
もうお腹いっぱいなのにそれでも体が求めてしまう。

手が勝手に動いて取ってしまう。
そんな私を見て彼が笑う。
あー...すごく眩しい。

でもさすがに次流れて来たら最後にしよう。
さすがに...苦しいや。
幸せすぎるのも苦しいんだ...。

そう思いながら手を伸ばしたが...
タイミングがズレてしまった。
欲しかった"それ"はそのまま流れて行ってしまった。

待って...!!行かないで...!!

私の情けない姿を見て彼はまた笑う。
「回転寿司に来てここまで一喜一憂する人初めて見たよ。」

語り部シルヴァ

10/23/2024, 10:24:14 AM

どこまでも続く青い空

旅路の途中に茶屋を見つけた。
団子と茶を頼み縁台に腰掛ける。

思っていたよりも足は疲れていたらしく
座った途端足に重みを感じた。
次で宿を探そう。そう思いながらも空を見上げる。
雲ひとつない空はとても綺麗で手に取れるんじゃないかと
思うくらい青い。山がなければ永遠と続いていそうだ。
山が化粧づいてきて綺麗な山吹色になっている。
あと少しすれば紅葉が映えるだろう。

「お待たせ致しました。」

来た団子を1口。程よい甘さと弾力が頬を溶かすようだ。
お茶も苦みが団子と合わさって美味い...

さて、もうひと歩きだ。
宿を目指すのもいいがこの青い空の終点を
見つけるのも面白いかもしれない。

青い空、吹き抜ける風、色付く景色。
秋を噛み締めながら歩き始めた。

語り部シルヴァ

10/22/2024, 10:54:15 AM

衣替え

外を歩く人達は長袖を着ている人が増えた。
学生はカーディガンを、社会人はスーツを。
ここ天界も一応四季の変化はあって制服が長袖に...

なんてことはなく、長袖の制服なんて着てると
汗だくになるくらいに大忙しだった。

8月の終わり...夏休み明けからどうも仕事が殺到する。
人間界はみんな疲れているようで
こっちの世界に来る人が増えてきた。
それも不思議なのが悪人がほぼ居ないことだ。
こちらにやってきた人間は
根っからの真面目だったり人に優しくできる人間だ。

各々にそれぞれの人生がある。
一人一人の人生を見ながら天国か地獄かに送る仕事も
大変だが、それを案内するのも大変だ。

僕自身カーディガンが好きだから
早く着ながら下界を散歩できる時間が欲しい。

だから....辛いのはわかるけど、死ぬ前に一旦やれることは全部やっとこうね?

語り部シルヴァ

10/20/2024, 10:57:55 AM

始まりはいつも


「ん"ん"。あー、あー。」
喉の調子を整える。
寝起きだと声があんまり出ないから念入りに。
朝が寒く感じるこの頃は特に。
やりすぎて逆に喉を痛めないように...

よし。録音ボタンを押して...
「おはよ。寒くなったね。風邪に気をつけてね。」
少し間を開けて録音ボタンを止める。

最後に自分の声を確認する。
...ここだけはどうも好きになれない。
でも気持ち悪い言い方になってないか、滑舌は大丈夫か。
ちゃんとした声を届けたいから我慢する。

よし、大丈夫そう。
録音した音声をメッセージに届ける。
朝起きて最初に聞く声は僕がいいと彼女は
いつも嬉しそうに言ってくれる。

その期待に応えるため今日も僕は
静かな朝を彼女よりも早く迎える。

語り部シルヴァ

10/20/2024, 6:20:05 AM

すれ違い

よく兄とは仲がいいと昔から言われていた。
それを俺たち兄弟は誇りに思っていた...
だが俺たちが大人に近づいていくにつれて
接することも減ってきた。

その時に気づいた。
俺たちはお互いの好きなことや趣味、
考え方についてあまり知らないのでは...?と。
実際今の兄がどんな価値観を持っているのかは
偏見でしか知らない。

それからある日、事件は起きた。
兄は俺のためと言いながらも俺の大切なものを侮辱した。
そこから関係は修復することなく劣悪になっていった。

そこで俺は気づいた。
昔から仲が良かったわけじゃない。何も知ろうとしなかったからこそ喧嘩が起きなかった。

とうの昔から俺たちはどこかですれ違っていたようで、
偽りの仲の良さに誰も気付かなかったんだ。

語り部シルヴァ

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