踊るように
週末の夜の都会はみんな楽しそうだ。
土日が休みの人が多いからだろう。
世間では華やかな金曜日を華金と呼ぶことがあるらしい。
まあ、僕も浮かれてるひとりなのかもしれない。
明日が休みだから寝る時間すら勿体ないからと
夜の都会に駆り出したところだ。
ハメを少し外す学生、ホストやキャバクラの勧誘、
そしてお酒で出来上がった社会人。
みんな楽しさの基準は違うだろうけど、いい顔をしている。
みんな心踊るように金曜の夜を飾るのだろう。
僕も沢山楽しもう。
とりあえずいつものゲーセンに足を運んだ。
語り部シルヴァ
時を告げる
古時計がボーンボーンと静かな家に鈍く響く。
廊下からこっちの部屋にまでしっかりと聞こえるその音は
正午の知らせをきちんと届けに来る。
私が生まれるもっと前から動いているのに今でも
数分のズレも無く時間を知らせるのは大したものだ。
古時計を見に廊下を歩く。
昔廊下を歩いている時にちょうど鳴り出したせいで
びっくりして最初は古時計のことが嫌いだった。
大人になった今やっと古時計の趣がわかってきた。
ゆっくりと動く振り子、絡繰り仕掛けで動く音、
鈍くなる時報。
こんな時計を考えた人はさぞ天才だったのだろう。
古時計を優しく撫でる。
いつもありがとう。次の時報も期待しているよ。
さっき正午の時報を聞いたからかお腹が空いてきた。
冷蔵庫に何かあったかな...
お腹を擦りながら台所へ向かった。
語り部シルヴァ
貝殻
綺麗な貝殻が落ちていた。
真っ白で2本茶色い筋のような線が引かれた二枚貝の片割れ。
太陽の光を照らすとうっすらと透ける。
主を無くし誰か使われることも無く
亡骸になってしまったのにどうしてこうも綺麗なのか。
指で強く押しても割れる気配が無かった。
少し考えて持ち帰ることにした。
家に着いて貝殻を丁寧に洗って
表面を軽く磨く。
割れないように一部穴を開けて紐を通す。
そうすればあっという間のネックレスの完成。
なんだかお守りのように感じた貝殻をネックレスにした。
こんなに綺麗なのだから、私が死ぬまで付き合ってもらおう。
無気力で亡骸同然の私もこの貝殻も似たもの同士だ。
だから、仲良くしてくれると嬉しいかな。
語り部シルヴァ
きらめき
小さい頃、仕事で忙しかった親が
遊園地に連れていってくれた。
夕方眠くなってウトウトとしてきた頃に
お母さんが見て見てと指を指した。
その先には暗くなっていく世界とは別で優しい明かりを
いっぱいつけたパレードカーが列を作ってゆっくり進む。
その上でキャラクターが踊ったり、ピカピカと何色もの色が
交互に光ったりする光景は眠気を飛ばし今からもう一度
遊園地で遊びたいと思わせてくれた。
大人になった今でもあの日と似た夕焼けを見ると思い出す。
闇の中に優しく輝いていたあのパレードを、
親が忙しい中くれた思い出を...
あのきらめきは、一生忘れないだろう。
語り部シルヴァ
些細なことでも
君がメッセージに顔文字を付けないと機嫌が悪いのかと思ってしまう。
君が素っ気ない返事をすると元気がないのかと思ってしまう。
君がゲームをしないと疲れてるのかと思ってしまう。
君の小さな変化を見つけてしまったら君に何かあったんじゃないかと思ってしまう。
過保護かもしれないし、余計なお節介かもしれない。
君のことが好きだから、少しでも何かあったなら力になりたいから...
そんな気も君はきっと知らないだろう。
君は僕と性格が真逆で楽観的だから。
そんな君が好きだからそのままでいて欲しい。
だから君が困るようなことは言わないつもりだ。
それも君のいいところだと好きになりたい。
語り部シルヴァ