空模様
ごめんなさい。
曇天の空の下、僕の告白は見事玉砕した。
なんで上手くいくと思ったのか小一時間自分を問い詰めたい。
そう思いながら校庭裏で1人ぽつんと佇む。
これから目が合う度気まずくなるんだろうか。
話しかけても無視されてしまうんだろうか。
友達でいて欲しいって言われたけどどうせ友達以下の存在になってしまう。
あー...これなら告白しない方が良かった。
もう泣きたい気分だ。
高校生にもなって泣く訳にもいかないから
上を見上げてぐっとこらえる。
...雨が降り始めた。
よかった。これなら涙を流してもバレないか。
語り部シルヴァ
鏡
僕はしてもらったことを返す。
助けてもらったなら力になるし
優しくしてくれたら優しくする。
他人は鏡だ。
だから僕が鏡になってみんながどれほど
素晴らしいことをしてくれてるかを教えている。
今日も助けてくれたから力になった。
良いことをすると気分がいい。
なのにこの曇った気持ちはなんだろう...
そう思いながら帰っていると、
怪しげな占い師に呼び止められた。
「お前さんは鏡か...面白い。
じゃあお前さん自身は何者なんだ?」
僕は鏡だ。
...自分で答えて違和感を覚えた。
僕を鏡に映すと何が見える?
僕はどういう存在?優しいのか悪い性格なのか...?
反射しても何も映らない。
顔面に鏡が貼り付いているようだ。
「わからんか...なら助けてやろう。」
そう言って占い師は僕の顔目掛けて木槌で僕の顔面を殴った。
パリンと綺麗な音が割れて鏡は鱗のように落ちた。
それからは自分のしたいように動いた。
助けを求めている人を助け、悩んでいる人に寄り添った。
前とやっていることは変わらないと思うけど、
前の曇った心はスッキリしていた。
「他人は鏡じゃ。だがそれはあくまでも例えの話。
受けたから返すはただの人形じゃよ。
自分から行動し、他人に評価を受けて初めて
"人は鏡"という言葉が成立するのじゃよ。」
語り部シルヴァ
いつまでも捨てられないもの
君からもらった懐中時計は随分と古びた。
メッキがはげ、緩くなった蓋、巻けなくなったネジ。
懐中時計としての役割はとうのとうに果たせなくなった。
ネジが巻けなくなったのは3年前。
それでも、君から貰ったというだけで
この時計はお守りにもなる。
隣に君がいなくとも、君が僕にくれたという事実を
この時計は教えてくれる。
未練がましい奴だ。
いつまでも引きずってる奴だと思われても構わない。
優しく懐中時計を胸に抱きしめる。
鼓動も伝わらないひんやりとした感覚は
冷たい現実を突きつけるかのようだった。
語り部シルヴァ
誇らしさ
おとうさんはいつもけいたいに向かってあたまを下げている。
ごはんを食べてるときも休みの日も...
そうやってでんわを切ったあと決まって
「ごめんなあ」と頭をなでてくる。
ぼくはそれがお仕事だと思ってる。
むずかしいことはよくわからないけど、お母さんが
「あれもお仕事だから、
ママたちでお父さんを応援しようね。」と言ってた。
だからぼくはお父さんのことを
かっこわるいと思ったことは1回もない。
休みの日にその大きな背中におぶってもらえるのが
たのしみだな。
今日もかえってきたらいっしょにごはんたべようね。
語り部シルヴァ
夜の海
波が行ったり来たりしている。
波の端でザブン、ザバァと音を立てる。
海面付近の砂はしっとりと湿っていて歩く度に
ジャグジャグと音がする。
静かな夜に音はこれだけ。
こんなド田舎な場所ではいつもの事だ。
実家に帰省したら楽しみはこれくらいだ。
静かな夜に海の音を聴く。
大学生なって都会で一人暮らしを始めたが、
18年もの間よくこんな何も無い場所で生きてきたものだ。
おかげで都会じゃ当たり前なことを学ぶのに
とても時間を食った。
満開の星空に漣の音だけが響く。
朝とは違う顔を見せる夜の海は私のお気に入り。
暗くて少し不気味だけど、
辛いこととかなんでも静かに飲みこんでくれそうだから。
語り部シルヴァ