語り部シルヴァ

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僕はしてもらったことを返す。
助けてもらったなら力になるし
優しくしてくれたら優しくする。

他人は鏡だ。
だから僕が鏡になってみんながどれほど
素晴らしいことをしてくれてるかを教えている。
今日も助けてくれたから力になった。
良いことをすると気分がいい。
なのにこの曇った気持ちはなんだろう...
そう思いながら帰っていると、
怪しげな占い師に呼び止められた。

「お前さんは鏡か...面白い。
じゃあお前さん自身は何者なんだ?」

僕は鏡だ。
...自分で答えて違和感を覚えた。
僕を鏡に映すと何が見える?
僕はどういう存在?優しいのか悪い性格なのか...?
反射しても何も映らない。
顔面に鏡が貼り付いているようだ。

「わからんか...なら助けてやろう。」

そう言って占い師は僕の顔目掛けて木槌で僕の顔面を殴った。
パリンと綺麗な音が割れて鏡は鱗のように落ちた。
それからは自分のしたいように動いた。
助けを求めている人を助け、悩んでいる人に寄り添った。
前とやっていることは変わらないと思うけど、
前の曇った心はスッキリしていた。

「他人は鏡じゃ。だがそれはあくまでも例えの話。
受けたから返すはただの人形じゃよ。
自分から行動し、他人に評価を受けて初めて
"人は鏡"という言葉が成立するのじゃよ。」

語り部シルヴァ

8/18/2024, 10:31:01 AM