「こどものように」
こどもの目は美しい。
ひとたび見る景色は新鮮で色濃く鮮やかにその瞳に映る。
大人の目も美しい。
長い人生をかけて見る景色は一色では表せない深い色をその目に映す。
こどものように色眼鏡なしに鮮明に景色を見ることは難しいかもしれない。
今までの経験や知識、大人から見るフィルターってあるよね。
でも、こどものように
暑い、寒い、楽しい、悲しい、嬉しい。
全部、全部。
感じるままに。見えるままに。
そのままの色を感じ取れる感性を持ち続けたいと思う。
「放課後」
放課後のチャイムと同時に体育館へ走り出す。
まるで誰かと競っているかのように一目散に体育館へ向 かう。
体育館の扉を開けると暑くて汗臭い。
うんざりする気持ちを抑えながら準備をする。
地元を離れ地方で部活に打ち込む。
毎日、朝練から夜遅くまで練習に打ち込む。
私なんでこんなに頑張るんだろう?なんのためだろう?
辞めたい、逃げたい。
辛い練習を耐え、乗り越える。
それでも思い通りにはいかない。何度も心が折れる。
地元に帰ろうか。部活なんてやめてしまおうか。
あんなに好きだったはずのものがこんなに嫌いになってしまうなんて。
辛いね。でもその頑張りは無駄じゃないよ。
必ず未来の役に立つ。
きっとこの経験が私自身や誰かを助けるものになると信じて。
そんな私の青くて苦い放課後の思い出。
「カーテン」
もうあの部屋、あの場所にはいないはずなのに。
締め切られているはずの無菌室で何故かカーテンが揺れた気がした。フワッと揺れて暖かい風を感じた。
「間違ってないよ、前に進まなきゃいけないよ」って言ってくれたのかな。
思い出すのは動かない直線。無機質な高音。
繰り返されることのない呼吸。
もう帰ってこない。冷たくなっていく一方。
カーテンで仕切られたその部屋には、もう新しい人がいて。自身と治療と日々戦っている。
前を向いて進めない私を励ましてくれたのかな。
助けられなかったという悔しい思いは次へ。
いつまでも泣いていられないね。
清潔で外気の入らない無菌室で私はリベンジしなくてはいけない。
待っててね。いつか必ずこの気持ちは払拭するから。
また私が進めなくなっていたらもう一度フワッと揺れてほしいな。