一尾(いっぽ)in 仮住まい

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4/4/2026, 2:42:24 PM

→短編・ハテナの茶碗

「それでいい」
親方は言った。
褒めてくれたっぽい。
でも、え、えーっと、……どれ?

――親方は、誰にも真似できないくらい高い技術を持つ陶芸作家だ。
親方の華麗な作品に憧れるし、その超絶技巧には心から尊敬している。
弟子を取らない親方に頼み込んで、やっとのことで弟子にしてもらって、はや3年。
親方の技術を横目で覚えては、仕事の合間を縫って、小さな茶碗を作り続けた。
丹精込めて作った茶碗は、自分にとっては名作だが、拙いものばかりだ。
水漏れしないだけマシである。いや、有名な落語なら、水漏れしてても名品扱いで買い手がつくかもなと、そんな捻くれたことを考えながら、自室として借りている離れに、すべて飾った。
滅多に離れを訪れない親方が、さっきやってきた。
翌日の仕事について簡単な打ち合わせをしたあと、親方は部屋に並んだ俺の茶碗を、どれとなく見ていた。小さく頷く。
なんか言われるかなと思ったが、難しい顔をしたまま立ち去っていった。
夕飯のあと、俺が片付けに立ち上がったとき、読みかけの新聞から目を離すことなく親方が呟いた。
「お前のあれ、それでいい」

――俺の頭はハテナでいっぱいになった。
親方の「俺の背中を見て育て」システムにも随分と慣れたつもりだった。
しかし、親方の「それでいい」は、弟子としての姿勢か、茶碗のどれかなのか、それとも別の何かなのか、まったく見当がつかない。
それこそ、はてなの茶碗だ。意味を読み違えたら大爆死。
「ありがとうございます」
頭のなかで増え続けるハテナの水漏れに四苦八苦しながら、俺はそう答えた。

テーマ; それでいい

4/3/2026, 2:25:22 PM

→1つだけ


「ひとつだけ」は、山の名前のようで、

「one issue」は、ティッシュペーパーのブランド名みたいで、

こんなバカげた投稿はonly one で、

私だけじゃないかしら(笑)


テーマ; 1つだけ

4/2/2026, 3:06:38 PM

→私の体をバラバラにしても……

『私』を取り出すことはできない。

脳みそに『私』は居るか?

心臓に『私』は居るか?

私にとって『私』は、まぁまぁ貴重品である。

テーマ; 大切なもの

4/1/2026, 1:37:29 PM

→四月バカ


風呂に入ろうと思って給湯ボタンを押したつもりが、どうやら押せてなかった。

風呂の蓋を開けて、空っぽの浴槽。

自分から自分へエイプリルフールをプレゼントされた気分になった。


テーマ; エイプリルフール

3/31/2026, 3:04:33 PM

→短編・軽やかな憎しみ

あなたは何も言わずに私に先立って汽車に乗り、私のスーツケースを荷物置きに押し込んだ。
「外から見送るよ」
「えぇ」
私の顔は強張ったままだ。今になって、物わかりの良いフリ? 
あなたの真意が分からない。下手をして機嫌を損ねたりしたら、どんな制裁が待ち構えているか分かったものではない。
しかしあなたは項垂れて、身構える私の横を通り過ぎて行った。
窓を挟んであなたと私。
汽車に乗る私は高い場所からあなたを見下ろす。そのことが私を安心させ、私は汽車のガラス窓を開けた。
「北の地では、いつでも雪が降ると聴いた。君は喉が弱い。気管支に気をつけて」
窓の外から、あなたがすがるように私を見上げた。
いつもなら「荷物を持ったせいで腕が痺れた」とか「お前は身勝手だ」だとか、執拗に攻撃しようとするのに、今日に限っては私を気遣う言葉しか言わない。その狡猾さに、私の背中に虫が這うような嫌悪感を覚えた。
汽車が動き始める。
あなたが足を一歩踏み出した。私は思わず身構える。追ってくる? 襲われる! 思わず体をギュッと両手で抱いた。青痣の鈍痛が、私の胃をひっくり返りそうに痙攣させた。
しかし、彼は動かなかった。強く唇を引き絞り、その場を立ち止まっている。
慈愛に満ちた瞳で私を見つめる。柔和な微笑みを浮かべた口の横に、手のラッパ。
「お幸せに!」
あなたが私の展望を願う? ありえない!
私はあなたを信じない。
私はあなたから受けた仕打ちを忘れない。
負けるものか。
私は窓を開けて身を乗り出した。
大きく深呼吸。とびきりの笑顔を顔に貼り付け、あなたに手を振る。
「あなたも!」
あなたの善意の表情がガラガラと崩れる。
冷たいナイフのような瞳が私を刺そうとした。
でも、もう届かない。
汽車は走り出した。あなたから遠ざかる。
私はいつまでも軽やかに手を振り続けた。

テーマ; 幸せに

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