→短編・引導
私の部屋で10年前のノートを見つけた。
なんとかページをめくってみる。
「死ぬな!」
たったそれだけ、書いてあった。
震える文字に、私は自分を思い出す。
苦労して保っていた思念が揺らぐ。その揺らぎは、全身から私という意識を溶かし始めた。
手の形を失った私から、ノートが滑り落ちる。部屋に積もった埃が舞った。
私は……誰だ?
自分を鼓舞するはずの言葉が、私の遺書になったあの日が、突如として私に襲いかかる。
夕焼け、どこからか漂う夕食の匂い、はしゃぐ子どもの声、通り過ぎる自動車、そして……動かない私。
すべてが私を包み、すべてがぐにゃりと歪む。すべてが、私の不在を知らしめる。
埃だらけの白い骨。割れた水がめと同じだ。形骸。魂は留まらない。
この世界に形を保てなかった私の最後の抵抗の跡が―、生を願ったはずの3文字が―、もはや私はこの世界に留まること許されぬ存在なのだと、私に本当の引導を渡した。
テーマ; 10年後の私から届いた手紙
→青いハートに感謝して
Happy Valentines!
贈ってもらったり
贈らせてもらったり
消極的なその交流が
生きるための大きな原動力です
テーマ; バレンタイン
→僕は人混みにその手を探す。
人の多いショッピングモールで、あなたは僕と繋いでいた手を離した。
「ここで待っててね」
あなたはそう言って、僕の前で手をひらひらさせた。
そのパントマイムのような手の動きに、僕の身体はピタリと止まった。
僕はその「待って手」の魔法にかけられて、ずっとあなたを待っていた。
しばらく待っていたら、ショッピングモールの係員の人が来て、迷子センターに連れて行かれた。それから警察が来た。
たくさんの大人が僕を囲んだ。けれど、そこにあなたの姿を見つけることはできなかった……。
あれから何年も経った。しばらく僕はあなたを待っていた。あの美しいパントマイムのような所作で、「待って手」が「おい手」になるのを待っていた。
待つのが無駄だと思うようになったのは、いつだっただろうか? もう忘れた。
それなのに、僕は今でもまだ、人混みにあなたとその手を探してしまう。
テーマ; 待ってて
→伝えたい! その愛らしさを!!!
猫は、愛らしい。
とっても可愛い。
可愛すぎて尊い。
尊すぎて昇天しそう。
こっちが忙しい時に限っての腹見せゴロンとか小悪魔が過ぎる。まったりしてるから撫でようとしたら、思い切りシャーされて手を叩かれる理不尽すら神がかっている。
神様はどうして猫を作ったのだろうか? それを聞いてみたいけれど、私には神通力がない。
あっ! そうだ! 祈りながら地面にめっちゃ大きな猫の絵を描いてみるってどうよ? あの、例のでっかい平原!
神様に届けたい想いとか、みんなあそこに書いてるもん。私もやってみよーっと!
ついでに未来の人にも猫の可愛さが伝われば、コスパ最強じゃね?
絵が下手だから心配だけど……、まぁ、なるようになるっしょ!
ナスカの地上絵の猫が描かれた経緯が、こんなだったら面白いなと思った。
テーマ; 伝えたい
→オリンピック
食い入るようにテレビ画面に釘付けになって、私は彼らの活躍に心を躍らせる。
私は彼らのことを想像する。プレッシャーを背負いながらも、自信を味方に競技に挑む彼ら。
スキーのジャンプ台からはどんな景色が見えるのだろう? モーグルのコブのような雪を滑りこなす感覚はどんなだろう? フィギュアスケートで他の選手のコスチュームに「良い感じの衣装だな〜」とか思ったりするのかな?
観客の声援、裏方のスタッフとのやり取り、会場の雰囲気、私が一生知ることのない世界。
特別で格別な経験だな。
日本の片隅にある小さな部屋のコタツ虫。この場所で、小さな想像をこねくり回しながら、彼らを応援する。
日本の選手の活躍は嬉しい。でも、やっぱり、出場選手の全員にエールを贈りたい。だって、オリンピックはスポーツの祭典だもの。
すべての選手が、最高のパフォーマンスを発揮できますように!
テーマ; この場所で