一尾(いっぽ)in 仮住まい

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→僕は人混みにその手を探す。

人の多いショッピングモールで、あなたは僕と繋いでいた手を離した。
「ここで待っててね」
あなたはそう言って、僕の前で手をひらひらさせた。
そのパントマイムのような手の動きに、僕の身体はピタリと止まった。
僕はその「待って手」の魔法にかけられて、ずっとあなたを待っていた。
しばらく待っていたら、ショッピングモールの係員の人が来て、迷子センターに連れて行かれた。それから警察が来た。
たくさんの大人が僕を囲んだ。けれど、そこにあなたの姿を見つけることはできなかった……。
あれから何年も経った。しばらく僕はあなたを待っていた。あの美しいパントマイムのような所作で、「待って手」が「おい手」になるのを待っていた。
待つのが無駄だと思うようになったのは、いつだっただろうか? もう忘れた。
それなのに、僕は今でもまだ、人混みにあなたとその手を探してしまう。

テーマ; 待ってて

2/13/2026, 1:21:56 PM