一尾(いっぽ)in 仮住まい

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12/3/2025, 2:06:46 AM

→私は小さな人間です。

母親の誕生日に花束をプレゼントすることにした。
花屋さんで、彼女が喜びそうな花を選んで花束にしてもらう。
「プラス料金でこちらの包装紙を掛けることもできますよ」と店員さん。
色紙を花束に合わせてみると、確かに可愛い。可愛さがグレードアップしている。
しかし、大事なのは中身の花束であって、デコレーション要員の包装紙ではない。そこに金を払うなら、もう1本くらい花を追加する方が良いのではないか。いや、それでもこの見た目の可愛さは、渡す方も貰う方もテンションがブチ上がって誕生日っぽい……。
「あ〜、じゃあ、包装をお願いします」

結果、母は喜んでくれた。
生け花をたしなむ彼女は、さっそく花束を解体して自前の花器に生けた。
包装紙は、あっという間に捨てられた。
うん、そうだよね、こうなるよね、知ってたさ。大事なのは中身だと花屋さんでも思ったもんな。
そう、プレゼントは中身あってのものだもんな。うん……。


テーマ; 贈り物の中身

12/2/2025, 1:59:03 AM

→とある業界紙より。

夏の台風は、地上に厄介な災難を起こしてしまう半面、その強烈な撹拌力で海の中を掃除する効果もあるという。
同じく冬の夜は外出を億劫にさせるほどの寒さだが、星空すら凍てつかせるため、サンタクロースが夜空を渡るのに必要不可欠である。
有識者によると、昨今の気温変化による冬の夜の減寒化は、サンタクロースの交通網を著しく混乱させ、事故に繋がる可能性があると指摘されている。
これは、子どもたちの笑顔を守ることを矜持に掲げる我らサンタクロース連合にとって、大問題と言えよう。
この問題の解決策として、地球温暖化を食い止めることが急務である。
    〜『月刊・白髭』より一部抜粋〜


テーマ; 凍てつく星空

11/30/2025, 2:57:30 PM

→右手左手


私は左利きですが、右手を使うように矯正されて、今日までやってきました。
咄嗟に左右の判断がつかず、右手のペンダコを確認して右を向くクセは、生涯変わらないでしょう。料理中に、その時々の使い勝手で、無意識のうちに左手を使って菜箸を操ることもあります。
こんな感じで、右手も左手も、これからも私の人生を一緒に紡いでいってくれることでしょう。
大事な相棒たちをねぎらって、夜な夜なハンドクリームのケアは欠かせません。


テーマ; 君と紡ぐ物語

11/29/2025, 3:49:21 PM

→言葉

何処かで誰ががアーとかイーとか声を上げて、体や心の痛みをその咆哮に乗せたとしても、大体は消え去ってしまうのだが、稀に言語化の上手い人がいて、その叫びが言葉というカタチを得て、名言になったりする。
幾億もの失われた響きの上に成り立つ、強靭なアーカイブ。


テーマ; 失われた響き

11/28/2025, 3:23:16 PM

→にわかには、信じ難いとも言えない、かもしれない話だが……

牛の赤身肉を、凍りつくほど冷えた霜の立つ朝に干しておく。すると、肉が霜を転写して、美しいサシが入る。
これが、かの有名な霜降り肉である。
ホントのようなウソの話。

テーマ; 霜降る朝

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