→短編・爺や、かく語りき。
やや、姫様! 何をなさっておいでです? 恋慕の情を数式で明らかにする、ですと?
なんと愚かなことを!
愛や恋は、非常に尊い情緒でこざいますぞ。それを数字に置き換えるなど、以ての外でございます。
爺は、姫様をそのような不人情な輩に育てた覚えはございませんぞ。
あれ? どうなさいました? 表情が曇ってございますよ?
え? 何かしておらねば、隣国の王子から手紙が来ぬ日を耐えられない……。
あれあれ、まぁまぁ!
フィアンセ様の便り無きをお嘆き故の、お暇潰しでございましたか。
致し方のない姫様でらっしゃる。
グツグツ思い詰めるのならば、隣国まで王子をお訪ねなさい。
「来い」と念じるよりも、「会い」にゆけばよろしい。
行ってもいいのかって、もちろんでしょう。姫様は、童話の主人公のような囚われの姫ではないのですからね。自分で運命を切り開きなさい。
あぁ、泣いたカラスがなんとやら。
そうそう、姫様には笑顔がお似合いですよ。
愛や恋の行方は、ハッピーな未来がお似合いございますからね。
テーマ; 愛(会い)―恋(来い)=?
→梨とギャンブル
ここ数日のあいだ、高熱にうかされていて、身体の寒気とは裏腹に、喉は熱で渇ききっていた。
猛烈に梨が食べたくなった。
果汁を保つために果肉があるかのような、「当たり」の梨。林檎よりもさっぱりとして瑞々しい果汁は、まさに甘露ってヤツだ。
呼気の熱さを苦々しく感じながら、布団の中で何度も梨を想った。
ところで、話はガラリと変わるのだが、数日前に熱に浮かされて奇妙な夢を見るだろうな、と書いた。
うん、見た。
なぜか私はギャンブルの卓に座っていて、トランプのカードが配られていた。
対戦相手の女性に見つめられ、観客の視線を浴び、ディーラーに目線でゲームの進行を促されたが、どんな種類のゲームなのか皆目見当もつかない。ポーカーなのか、ブラックジャックなのか……。しかしそのどちらにせよ、それ以外のゲームにせよ、ギャンブルに詳しくない私には、その場で何をしたら良いのか全く分からなかった。
だから「どうしていいのかわかりません」と素直に白旗を揚げたら、そこにいる全員にもれなく嗤われた。そして目が覚めた。
とても不条理だと思った。まぁ、ギャンブル自体、そんなもんか。
果たして小説のネタにはならないが、ここでのネタにはなったので、良しとしよう。
テーマ; 梨
→ここ2日ほどの猛暑について。
歌うようなサヨナラが
季節外れの熱波となって
風に乗って町から街へ
夏のお別れの挨拶だと
誰にも気付かれずに
人々のあいだを縫っていった
テーマ; LaLaLa GoodBye
→ネタ探し
どこまでも、高熱。
私と世界の輪郭が、曖昧だ。
でろんでろんの身体、
ぶわんぶわんの頭、
どろんどろんの思考。
このまま入眠したら、
トンテモナイことになりそうだ。
どうせなら、小説のネタになりそうな
荒唐無稽な夢を見るくらいのご褒美がほしい。
あと、早く熱が下がってほしい。
健康のなんたるありがたいこと!
テーマ; どこまでも
→短編・齟齬
居酒屋で、二人の女性が飲み交わしている。
「あ~、マジで仕事辞めたい〜」
「今日だけで3回は聞いてるわ」
「辞められんもん〜。言論の自由くらい許してよ」
「もし宝くじの1等が当たったとしたら、仕事辞める? 何したい?」
「もちろん仕事は即ヤメ。で、海外に行ってぇ、キャンピングカー買ってぇ、目的地無しのその日暮らし。アメリカとか大っきい土地の分かれ道でさ、右行くも左行くも、その日の気分」
「あ~、それって未知だね。未知の交差点」
「どうした? どうしてそんなにクーってなってんの? 普通に交差点って道にあるよね?」
「深いなぁ〜。交差点に未知がある! 哲学極まってんじゃん」
「て、哲学?? そんな話、してたっけ? じゃあ自動車教習所はアテナイの学堂ってこと??」
「未知(↘)?」
「道(→)??」
「「ん?」」
テーマ; 未知の交差点