→貴方へ
ここでしか会わない人たち。
貴方も私も、お互いに、
見知らぬ街の見知らぬ者たち。
それでも、
チョビっと知り合いみたいな気持ちで、
今日もハートを送りあうんだな。
テーマ; 見知らぬ街
→短編・その雷は、私の心に届かない。
雷が鳴った。
1、2、3……、私は稲妻と雷鳴の間隔を数える。そしてもう一度、1、2、3、4。雷鳴の大きさに反比例して、雷は遠い。
こんなふうに雷の遠近を測る方法を知ったのは、ずいぶんと昔。まだ小学生のころだ。映画がそれを教えてくれた。調べもせず、そう信じているだけ。
貴方が怒っている。
まるで日本画の雷様のように顔を真っ赤にして、何度も、怒りの雷を落とす。
食後のコーヒーをあなた提供するタイミングが悪いというのが発端だった。そこからは、いつも同じ流れ。なし崩し的に色々なことを持ち出して、私を詰じる。
大きな声を上げれば、私を威圧できると思っているのだ。
昔は確かに私も震え上がったものだけれど、何度も同じことを繰り返すうちに、私の心は慣れてしまった。いきなりの怒鳴り声に驚きはするが、数を数えて平静を取り戻すことを覚えた。習慣から得た学習だ。
もはや、怒号は遠雷。ただ聴いている。
この雷が私の心に届くことは、もうないだろう。
テーマ; 遠雷
→ Midnight Blue のレトロ感
う〜ん……。
Midnight もBlue も、大文字で始まるところに、昭和を感じる。
歌謡曲のタイトルっぽいからかね? 『ルビーの指環』的な。
テーマ; Midnight Blue
→え? 私と飛び立ちたい??
精神的に?
肉体的に?
もし肉体的に現世からの離脱をお望みなら、お一人でどうぞ。
精神的な方面なら考えてみますけど、落下はイヤだなぁ。堕落ラクラク、楽の道〜、おぉ、怖!
上向き飛翔なら、まぁまぁ。無きにしも非ず、かな。
テーマ; 君と飛び立つ
→記憶の一角を占めるものたち。
高速道路を走る車の、窓の向こうにチラリと見えた山中の藤の木。
今はなき、テアトル梅田の出入り口横スペースに落ちていた紙ゴミ。
休日に訪れたアウトレットモールで買わなかったT シャツ。
どれもこれも思い入れなどない。しかしなぜか心から消えずに残り続けている。
たぶんこれからもきっと忘れないんだろう。
理由も、意味もない、風景たち。
テーマ; きっと忘れない