一尾(いっぽ)in 仮住まい

Open App
8/12/2025, 4:20:57 PM

→記憶の断片

お盆休み。
神社の祭り。
セルロイドのつやつやしたお面が並んでいる。風鈴売りの風鈴が、夜風に輪唱する。
片手にヨーヨー。何色かで波のように線をつけ、小さな水玉を飛ばした、よくある柄。パツンと張ったゴムの緊張感が手のひらに伝わる。
「その模様、カラフルな人魂みたいだね」
ヨーヨーを指差したのは、少女の白い手。
浴衣を締めるピンクの兵児帯が金魚のように揺れている。 
彼女の顔も、神社の場所も覚えていないけれど、これは確かに私の記憶。
毎年、夏になると思い出す。

テーマ; 真夏の記憶

8/11/2025, 5:23:39 PM

→短編・彼は混乱している。

 夏休みに入って、幼馴染の3人で遊んだ。拓人と日菜と俺、3人とも別の中学に入学してから遊ぶ機会は減っていたので、久しぶりで楽しかった。誘ってきたのは拓人だった。
 2人は幼稚園時代からの親友だし、話さなくても何でも伝わる。気を遣わない間柄って楽だ。
 中学校のトモダチとは距離感が全然違う。空気読むとかしなくても、爆笑できて、とにかく最高だった。
 近くの神社で祭りがあるから行こうなんて盛り上がりながら、公園でアイスを食べていたとき、俺はうっかりアイスを落としてしまった。バニラアイスでTシャツを汚してしまったので、トイレに洗いに行った。なかなか落ちなくて時間がかかった。
 拓人と日菜のいるベンチに戻ると、なんか変な感じになっていた。2人とも妙にニヤニヤしてるっていうか……、慌ててるっていうか?? 変に顔が赤い。どうして2人で目配せしてんの? 何? その共犯者っぽいヤツ? 2人対俺、みたいな構図が出来上がってね?
 なーんか、ヤな感じだなぁ。
「実は、さ……、俺と日菜、付き合うことになってさ」
 はい??? 突然のトンデモ話についていけず、目を白黒させる俺に、拓人は簡単な説明をした。俺がトイレでアイスな汚れを落としている最中に告白したのだと。
「マジ?」
 拓人の横で、日菜は顔を真っ赤にして無言で頷いた。
「えっと、まぁ、そういうわけだから」
「そういうわけかぁ」
 どうしようもなく、俺はヘラヘラと笑ってみた。2人は親友だし、そりゃ仲いいほうがいいんとけど。う〜っ。
 ビバ!幼馴染って盛り上がってたの、俺だけ? ―っていうか、アイスこぼさなきゃ、こんな変なタイミングでの拓人の告白はなかった?? まさに後悔先に立たず。確か英語で「こぼれたアイスクリームを嘆いても無駄だ」って言うんだっけ? 合ってるよな? なんか違う気もするけど、どうでもいいわ。それどころじゃねぇ。
 いやいやいや、めでたいことなんだ、よなぁ?? よし! 祝おう! 
「おめでとう??」 
 なんか語尾が上がったけど、気がつかれなかったようだ。照れながらの「ありがとう」が返ってきた。
 あ~、神社の祭り、辛いなぁ。一緒に行くの断ったほうがいいかなぁ〜。

テーマ; こぼれたアイスクリーム

8/10/2025, 4:45:39 PM

→ひらがなの声

 彼は、嗚咽の中に声を震わせた。
「やさしさなんて……」
 項垂れて、目を真っ赤にした彼から零れたその言葉は、まるで初めて話す幼児のように辿々しかった。
 私は、彼の途切れた言葉の先を尋ねなかった。ただ、力の抜けた身体を抱きしめた。
 彼の鋼のような筋肉質の身体に一瞬の緊張が走ったが、彼は無抵抗のまま私を受け入れた。
 彼は、強がりを、猜疑心を、不信を捨てた。
今、私の腕の中にいるのは、人の優しさに初めて触れた獣だ。


テーマ; やさしさなんて

8/9/2025, 2:20:49 PM

→夏のある一日の夕方のこと。

暑苦しい気温の中に、冷ややかな一陣の風を感じた。
空を見上げると、暗い雲と目が会った。
きっともうすぐ雨が降るな、そう思った矢先にポツリと一筋。ポツポツと二筋、三筋。そして、ポツポツは、ザーザーになった。
こりゃ、たまらん。お盆休みで閉まっていた店前で雨宿り。
明日は小学校で夏祭りがあると、ご近所の子どもから聞いたことを思い出した。
どうか明日は降りませんように。

テーマ; 風を感じて

8/8/2025, 1:22:38 PM

→夢じゃない、でも、現実でもない。


フィクション小説を読み耽る、
その贅沢な時間のこと。


テーマ; 夢じゃない

Next