一尾(いっぽ)in 仮住まい

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→記憶の断片

お盆休み。
神社の祭り。
セルロイドのつやつやしたお面が並んでいる。風鈴売りの風鈴が、夜風に輪唱する。
片手にヨーヨー。何色かで波のように線をつけ、小さな水玉を飛ばした、よくある柄。パツンと張ったゴムの緊張感が手のひらに伝わる。
「その模様、カラフルな人魂みたいだね」
ヨーヨーを指差したのは、少女の白い手。
浴衣を締めるピンクの兵児帯が金魚のように揺れている。 
彼女の顔も、神社の場所も覚えていないけれど、これは確かに私の記憶。
毎年、夏になると思い出す。

テーマ; 真夏の記憶

8/12/2025, 4:20:57 PM