→曖昧
世界が二進法で
すべてが白黒判定で
社会規範は勧善懲悪で
自分と他人のパーソナルスペースが完全分離で
ゼロか満タンしか存在しない、
そんな世の中が、どこかの世界線に存在するなら、
そこにだけは異世界転生したくないな。
自分すら好きでも嫌いでもない私は、
曖昧な笑顔と生返事で、
なんとか今日を乗り切った。
なんとか今日を乗り切ったよ。
テーマ; 好きになれない、嫌いになれない
→地球の自転、止まれってくれよ。
夜明けなんて大嫌いだ。
ただ空が明るいってだけで、
心に妙な希望が湧いてくる。
実際には何も変わっていないのに。
いっそのこと、
夜の闇に染まって、
真っ黒く染まって、
もう後戻りもできないくらい、
闇夜に迷って果ててしまいたい。
眠れぬ夜の先にある白んだ朝、
いつもそんなことを考える。
今日もまた夜が明けた。
この歯車を回すような毎日から、抜け出したい。
テーマ; 夜が明けた。
→付加価値
ふとした瞬間、自分が無価値に思えて、
なぜ生きているのかと自虐的な気分になることがある。
背中が痒いと悶えるパートナーの背中を掻いたり、
このアプリで誰かが自分の書いたものを読んでくれたり、
そういった諸々の繋がりが、
自分の価値をちょっと肯定してくれる。
消極的な承認欲求。
テーマ; ふとした瞬間
→ペア
どんなに離れていても、彼らはお互いに干渉しあう。
片方が上向きなら、もう片方は下向き、右回転には左回転。
惑星間ほどの距離が離れていても、その連動に狂いはないらしい。
息ぴったりの反目。天邪鬼でもこうはいかない。
一周回って相思相愛だな、もつれた量子たち。
テーマ; どんなに離れていても
→短編・温度差
「今から、こっちに来ない?」
彼は電話向こうの恋人に誘いかけた。行きつけの飲み屋に誘ったのだ。金曜日の夜、そのまま彼の部屋に泊まってもらおうとそんな皮算用込みである。
彼女の返事は芳しくない。「えー?」や「そうだなぁ」と煮え切らない回答を繰り返す。
それでも彼は楽しかった。彼女との何でもない会話に心が弾む。打ち返す波と戯れるような軽やかな気分は、酒に酔っているからではない。
彼女に恋しているからだ。
「会いに来てほしいなぁ」
彼氏から飲み屋に誘われた彼女は、しばらくの迷うフリのあと、逆に誘いかける策に打って出た。金曜日の夜である。他人のいる飲み屋ではなく、2人だけの空間でまったりしたかった。
電話口の彼氏は、彼女の誘いに「ホントにいいの?」と遠慮しながらもノリノリの口調だ。
彼が愛おしい。その下心すらカワイイ。何かが彼女の心をキュッと掴む。彼女はその正体を知っている。それは、深い愛情。深海をゆく潜水艇のような高揚感。
彼女は彼を心から愛している。
彼が彼女の部屋へとやって来た。2人で映画を見る。
「likeと loveは違うのよ 」
そんなセリフが字幕で流れる。
2人はそのセリフを気に留めない。
2人は一心同体だと思い込んでいる。
テーマ; 「こっちに恋」「愛にきて」