→言うまでもないことではございますが……、
わたくしたち、このアプリで巡り逢いましたのよ。
まことに現代風の出会いですわね。
貴方との出会いに乾杯。
テーマ; 巡り逢い
→休日。
薄いきゅうりとハムのサンドイッチ(辛子マヨネーズを効かせて)と、アイスティーの入ったポットを、トートバッグに詰める。
お気に入りのブラウスにタイトスカートを合わせて、蚤の市で買ったヴィンテージのワンピースを薄手のコート代わりに羽織る。大好きな革靴を履く。
お出かけ準備完了。
さぁ、どこへ行こう?
海? 山? それともショッピングモール?
仕事とは違って、目的地は気分次第。何にも束縛されないし、誰に気を使うこともない。
ただのんびりと、自分時間。
テーマ; どこへ行こう
→短編・big love !
「出かけんねやったら、明日のパン買って来てや」
「お母さん、もう寝るからな」
「ゴハンいらんときは、ちゃんと連絡し!」
「おカユさん、作ったで。食べられるか?」
あー! もぅ! オカンの幻聴、うるさい! あと、前から思っとったけど、なんで粥に「お」と「さん」付けんねん。何か粥に恩でもあるんか?
意識が朦朧とする。
熱が上がってきてんなぁ。俺、この時期、なぁんか体調崩すねんよな。あー、就職して、ずっと憧れてた東京の一人暮らしやのに、初めの有給、コレかよ。ムカつくし、GWはこっちで遊び倒したる!
単身者用1DKの部屋が、妙に広く感じられる。
鍵のない実家の部屋、―家族が、特にオカンが(アンタの洗濯もん、持ってきたで!)勝手に入ってくる―、が恋しくなってくる。
うっわ、俺、メンタルやられてんなぁ。恋しいとか! 恋しい、とか、……アカン、めっちゃアカン、淋しなってきた……。
ん? 何やねん。スマホがブルっとる。誰やねん。こんなしんどい時に! あっ……。
―オカンやで。アンタいっつも春に熱出すやろ。元気か?
「……なんで名乗っとんねん」
力のなくツッコミ。実家やったら、誰か拾ってくれんねんけどな。一人暮らしの部屋に俺の声だけがボソリと響いた。
SNSのメッセージを打ち返す。
―心配しすぎ。めっちゃ元気やで。GW、そっちに帰るわ。なんかほしい土産あるか?
テーマ; big love !
→ディーヴァ
ささやくようなウィスパーヴォイスで
あなたは歌う
恋人との別れを
霧のようなその声が
聴く人の心にシンシンと
共感、感動、感涙
人々はあなたを賞賛する
私だけに罪悪感を植え付ける
お願い、もう許して
あなたの束縛に耐えられなかった
あなたの歌はミリオンヒット
今日も至る所から聞こえてくる
無駄だとわかっていても、私は耳を塞ぐ
テーマ; ささやき
→短編・公園で夜景を見る、私と彼女。
高台の公園に立つ。夜風が頬を撫でる。
眼下に夜景。街灯、電飾看板、高層ビルの屋上に灯る赤いランプ、住宅の明かり、遠くには工場のまばゆい常夜灯、細い光が流れたと思ったら、列車だった。まるで星空を見ているような感覚。
「満天の星空みたい」
私が思ったことを友人が口にした。
「同じこと思ってた」と私。
その共感に友人はふっと力なく笑った。
黙ったまま2人で夜の公園のベンチに腰掛けて夜景を見る。
「地球って他の星と比較して明るく見えるのかな? 電気使ってるし」
友人の唐突の問いに私は首をひねった。
「どうだろ?」
「地球人として、そうであってほしいなぁ」
「話のスケールがデカいなぁ」
私の呆れ声に友人の笑い声が重なる。
「うん、デカいよね。日常がちっちゃーく感じるくらい!」
そう言って彼女は大きく背伸びをした。
宇宙を見上げると、地上の星よりも少ない星空が頭上に広がっていた。
「あのさ……」
少し言いにくそうに彼女が言い淀んだ。
「何?」
なるべくなんでもないように問いかける。
「あの……、明日から少しづつ部屋を片付けたいんだけど、手伝ってくれる?」
「うん」
私は静かに頷いた。
ボサボサの髪と汚れた服の中で、彼女の晴れ晴れとした顔が光った。
「ありがとう」
星明かりの公園に、彼女の感謝の声が響いた。
テーマ; 星明かり