→短編・big love !
「出かけんねやったら、明日のパン買って来てや」
「お母さん、もう寝るからな」
「ゴハンいらんときは、ちゃんと連絡し!」
「おカユさん、作ったで。食べられるか?」
あー! もぅ! オカンの幻聴、うるさい! あと、前から思っとったけど、なんで粥に「お」と「さん」付けんねん。何か粥に恩でもあるんか?
意識が朦朧とする。
熱が上がってきてんなぁ。俺、この時期、なぁんか体調崩すねんよな。あー、就職して、ずっと憧れてた東京の一人暮らしやのに、初めの有給、コレかよ。ムカつくし、GWはこっちで遊び倒したる!
単身者用1DKの部屋が、妙に広く感じられる。
鍵のない実家の部屋、―家族が、特にオカンが(アンタの洗濯もん、持ってきたで!)勝手に入ってくる―、が恋しくなってくる。
うっわ、俺、メンタルやられてんなぁ。恋しいとか! 恋しい、とか、……アカン、めっちゃアカン、淋しなってきた……。
ん? 何やねん。スマホがブルっとる。誰やねん。こんなしんどい時に! あっ……。
―オカンやで。アンタいっつも春に熱出すやろ。元気か?
「……なんで名乗っとんねん」
力のなくツッコミ。実家やったら、誰か拾ってくれんねんけどな。一人暮らしの部屋に俺の声だけがボソリと響いた。
SNSのメッセージを打ち返す。
―心配しすぎ。めっちゃ元気やで。GW、そっちに帰るわ。なんかほしい土産あるか?
テーマ; big love !
4/23/2025, 6:28:39 AM