→短文・彼誰時
ピリッと冷えた冬の早朝のことである。
向こうからやってきた、顔のはっきりしない人に尋ねられた。
「あなたは誰?」
私はふんと鼻から息を吐いた。下手を打てばアイデンティティを崩壊させる恐れのある問いだったからだ。立ち位置を明確にするべきで、気合が必要だ。
「私は私だ」
その人は、錐を打ち込むような小さな細く鋭い金切り声を上げ、靄のように薄明に溶けていった。
何処かで、朝一番のカラスが鳴いた。
テーマ; あなたは誰
→短編・求ム、チェーンメール
このおてがみをうけとったひとは、
3日いないに5人の知らないひとに、
これと同じないようのおてがみを出してくださいね。
ある日、A ちゃんがこのおてがみを止めてしまったので、ことばの輪が消えちゃいました。
わたしたちの世界は、ことばでつながっています。ことばたちは自分で動けません。わたしたちのおてつだいがひつようなのです。
おねがいです。ことばの旅のため、そのつながりのため、あなたのちからを貸してください。
さいごに、
あなたの好きなことばを一つ付け足してことばの輪をつなげてください。
東雲 おはよう 可愛い 氷霜 マカロン 上澄み………――(別紙61枚に続く。これからも増えてゆく予定)
テーマ; 手紙の行方
→短文・不毛な、
何処か、遠くへ行こうか。
そんなことを言う貴方の、
左手薬指に輝く銀の誓いが、
私からyesの声を奪う。
帰らないで。
そんな私のワガママで、
マンションの扉を固く閉じる。
貴方は社会から目を背ける。
何も実りのない私たちの関係。
テーマ; 輝き
→短文・非推奨
そんな気軽な感じで時間を止めるもんじゃないッスよ。
原子も活動停止すると思うんで、すべて固まったみたいになって……、そうなると空気も固まるから動けないだろうし、酸素も吸えなくなる。
そんな素人想像はともかく、一番気になるのは「独り」になるってこと。淋しくないッスか?
う〜ん、やっぱりオススメしませんよ。
テーマ; 時間よ止まれ
→短文・初体験
君の声がするすると、私の心に忍び込む。
「それ、イイね」
君には何気ない一言だったのだろうね。
でも、
私にとっては君を意識する磁石になった。
あの日からずっと君を探してしまう。
恋って、
こんな風に落ちるもんなんだね。
テーマ; 君の声がする