→短文・彼誰時
ピリッと冷えた冬の早朝のことである。
向こうからやってきた、顔のはっきりしない人に尋ねられた。
「あなたは誰?」
私はふんと鼻から息を吐いた。下手を打てばアイデンティティを崩壊させる恐れのある問いだったからだ。立ち位置を明確にするべきで、気合が必要だ。
「私は私だ」
その人は、錐を打ち込むような小さな細く鋭い金切り声を上げ、靄のように薄明に溶けていった。
何処かで、朝一番のカラスが鳴いた。
テーマ; あなたは誰
2/19/2025, 3:55:59 PM
→短文・彼誰時
ピリッと冷えた冬の早朝のことである。
向こうからやってきた、顔のはっきりしない人に尋ねられた。
「あなたは誰?」
私はふんと鼻から息を吐いた。下手を打てばアイデンティティを崩壊させる恐れのある問いだったからだ。立ち位置を明確にするべきで、気合が必要だ。
「私は私だ」
その人は、錐を打ち込むような小さな細く鋭い金切り声を上げ、靄のように薄明に溶けていった。
何処かで、朝一番のカラスが鳴いた。
テーマ; あなたは誰
2/19/2025, 3:55:59 PM