蒼夜

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4/8/2023, 1:48:20 PM

ある朝目覚めると、死んだはずの姉が目の前にいた。
「あっ、おはよう」
寝ていた私を上から覗きこみながら、生前と変わらない笑顔でそう言った。
「おはよう」
自然と私も挨拶をした。

それから、姉はいつも私の側にいた。
よくある話のように、姉の姿は私以外には見えていないらしい。
朝起きてから、仕事に行き、終わったら家に帰る。変わらない日々の中に姉が加わる。
今までのことを姉と話す、姉が質問し、相槌をうつ。
生前と変わらない優しい姉がそこにいた。

「ねぇ、お姉ちゃん」
「これからもずっと、一緒にいてよ」
私が言うと、姉はちょっと考えてから
「そうね」
「そう出来たらいいね」
困った顔をしながら、そう言った。

姉は優しく、聡明な人だった。
誰からも愛されていた。
家族も友人も、他の大人たちも皆。
姉が羨ましくなかったといえば、嘘になる。
けれど、そんな気持ちが薄れるくらい、私は姉が大好きだった。

だから、姉が刺されたと聞いたときは
何の冗談だと思った。

刺したのは、全く知らない男だった。
どうも以前、道に迷っていたところを姉が声を
かけて道案内をしてもらったらしい。
ただ、それで何を勘違いしたのか、自分と姉が両思いだと思ったと。
姉のことを調べ、見つけ、後を着けていたら、男性と一緒にいた。
弄ばれたと思った男は姉が一人になる時を狙って刺した。
姉に付き合っている男性はいなかった。
その時一緒にいたのは同じ委員会の役員で、帰る方向が偶然一緒だった。
姉は運が無かったのだ。

いつまで一緒かわからない。
でも出来ることならこれからずっと、
姉が生前出来なかったことをやってあげたい。

4/4/2023, 10:39:35 PM

迷ったら動いてみたらいい。
自分で考えてみたらいい。
間違えたっていい。
人生それでいいと思うんだ。

4/3/2023, 4:27:43 PM

1つだけ、空いている席がある。
式が一段落したところでそこへ近づく。
空いている席の隣に座っていた義姉が、こちらに
気づいて立ち上がって頭を下げてきた。
僕もつられて頭を下げた。
そうして少しの間いろいろな話をした。
「素敵な式になって、兄も喜んでいると思いますよ。」
空いている席に置いてある写真を見ながら僕が言うと、義姉はそうですね、とほっとした様子で答えた。

式が再開し、スピーチや友人たちによる催し物が終わると、司会者がスクリーンに注目してください、と告げる。
会場内の明かりが消え、天井からスクリーンが降りてくる。
なんだなんだと会場内がざわつく中、スクリーンが明るくなり、一人の男性が写った。
えっ、と驚く声が聞こえる。
それは義姉かあるいは今日の主役である新婦か、
あるいは双方かもしれない。

『1つだけ、頼まれてくれないか。』
数年前、病院で兄から言われた言葉が思いだされる。大腸がんだとわかり、余命いくばくも無いと兄から告げられてから、仕事の合間に病院に顔を出すようにしていた。
あの日、真剣は顔をして告げられた言葉を今でも思い出す。
そうして、兄の体調の良い時に撮影をおこなった。
『娘の結婚式の時にこれを流してほしい。』

『―――私が願うのは1つだけです。』
スクリーンの中の兄が告げる。
結婚のお祝いをし、出来ることなら直接伝えたかったと語った。
『どうか幸せになって下さい。』