ある朝目覚めると、死んだはずの姉が目の前にいた。
「あっ、おはよう」
寝ていた私を上から覗きこみながら、生前と変わらない笑顔でそう言った。
「おはよう」
自然と私も挨拶をした。
それから、姉はいつも私の側にいた。
よくある話のように、姉の姿は私以外には見えていないらしい。
朝起きてから、仕事に行き、終わったら家に帰る。変わらない日々の中に姉が加わる。
今までのことを姉と話す、姉が質問し、相槌をうつ。
生前と変わらない優しい姉がそこにいた。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「これからもずっと、一緒にいてよ」
私が言うと、姉はちょっと考えてから
「そうね」
「そう出来たらいいね」
困った顔をしながら、そう言った。
姉は優しく、聡明な人だった。
誰からも愛されていた。
家族も友人も、他の大人たちも皆。
姉が羨ましくなかったといえば、嘘になる。
けれど、そんな気持ちが薄れるくらい、私は姉が大好きだった。
だから、姉が刺されたと聞いたときは
何の冗談だと思った。
刺したのは、全く知らない男だった。
どうも以前、道に迷っていたところを姉が声を
かけて道案内をしてもらったらしい。
ただ、それで何を勘違いしたのか、自分と姉が両思いだと思ったと。
姉のことを調べ、見つけ、後を着けていたら、男性と一緒にいた。
弄ばれたと思った男は姉が一人になる時を狙って刺した。
姉に付き合っている男性はいなかった。
その時一緒にいたのは同じ委員会の役員で、帰る方向が偶然一緒だった。
姉は運が無かったのだ。
いつまで一緒かわからない。
でも出来ることならこれからずっと、
姉が生前出来なかったことをやってあげたい。
4/8/2023, 1:48:20 PM