桜月夜

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5/3/2026, 9:53:08 AM

   : 優しさだけで、きっと


それは、彼のただの優しさだけで、きっと
私への愛ではないことはわかっている

でも、あの深い眼差しを向けられると
私の心は、時を止めてしまう…

私への愛はあるの?
それともいったい…

わからないわ…

ねぇ、お願いだから何か言ってよ
どうして何も言ってくれないの…

はぁ… まただわ
この子ったら、散歩に出掛けると
必ずこの銅像から離れないのよね…

この銅像に何かあるのかしら?
いつも体をこすりつけたり
うるうるの瞳で見つめたり
うっとり話しかけたり…

ほら、もう行くわよ
少し強めに引っ張ってみる

あぁ~、まただわ〜
私たちを引き裂くこのリード
憎たらしいったらありゃしない

でも、私は諦めないんだから
この愛を、貫いてみせる!

まずは早く帰っておやつを食べないと
作戦はそれからでも、遅くないわ


                   桜月夜

5/2/2026, 8:26:50 AM

   : カラフル


えぇ、私、ハッキリ見ました
犯人が逃げていくところを…

犯人の特徴、何か覚えていますか?

はい、ハッキリ覚えています
犯人は、とってもカラフルな服を着ていました
すごく似合っていました

で、犯人は、あなたに見つかった時
どんな様子でしたか?

一瞬こっちを見たんですけど
直ぐに目を逸らしたんです
よほどマズイと思ったんでしょうね
逃げる時に盗んだものを落としてしまって
ハタと気づいた犯人は、拾いに戻ろうか
どうしようか、とても悩んだ様子でした
それがとってもかわいかったてす

犯人は、直ぐに見つかると思いますか?

えぇ、直ぐに見つかると思いますよ

どうしてそう思うんですか?

だって、もう少しでご飯の時間ですから

カラフルな服の犯人が
ドアの近くで、こちらの様子をうかがっている

どうするの? ご飯の時間だけど

バツが悪そうな顔をしていたが
背に腹は代えられないのだろう
すごすごやって来て、静かに伏せた
ごめんなさいの顔がまたかわいい

食べていいよ

嬉しそうに立ち上がり
尻尾をブンブン振っている

これもまた、かわいい


                    桜月夜

4/30/2026, 2:59:31 PM

   : 楽園


ボクは、生まれた時から
独りぼっちだった

兄弟はいたけれど
生まれつき小さかったボクは
母や兄弟から相手にされず
まともにミルクも貰えなかった

気づけば、家族は消えていた

お腹がすきすぎて動けず
鳴く声も消え入ってしまった

どうして誰も、ボクを愛してくれないの?
ボクは、生まれちゃいけなかったの?

寒くて、怖くて、体が震えた

どうしたの? 大丈夫?

優しい声が聞こえた気がした

怖くないからね 抱っこするよ

ゆっくりとボクを抱き上げた手が
今まで感じたことがないくらい温かくて
ボクは、力の限り鳴いたんだ

そこからのことは、覚えていない

気づけば膝の上で、とっても愛おしそうに
頭を撫でられていた

起きたのね もう大丈夫 心配しないで
そうだ、お腹空いてるでしょ?
ミルク飲もうか

立ち上がろうとする手を、ボクは
一生懸命つかまえたんだ
またおいていかれそうで、怖かったから…

安心して、もうあなたを独りにしないから
これからここが、あなたのお家だよ
仲良くしてね

また、頭を撫でてくれた

楽園という場所は
ボクに生きる希望を、そして
眩しい未来をあたえてくれた

この手の温もりが
ボクにそう教えてくれた


                   桜月夜

4/30/2026, 5:37:19 AM

   : 風に乗って


白い綿毛たちが肩を寄せあい
何やら話をしている

ねぇ、ボクたち、どうやって行くの?
ここから歩いて行くの?
ボク、ちゃんと歩けるかな…

時折、風が綿毛を撫でる

大丈夫、ボクに作戦がある!

どんな? どんな作戦?

風に乗って行くんだよ!

風に乗るの?
ボク、なんだか怖いよ…

平気だよ
ちょっと目が回るかもしれないけど
その時は、ゆっくり深呼吸して
身を任せればいいのさ!

綿毛たちはそれぞれに顔を見合わせ
うん、わかった、君を信じるよ!
少し興奮気味に瞳をキラキラさせた

綿毛たちの決心を確認したのか
風が綿毛たちをいっせいに吹き飛ばした

わ〜、ボクたち飛んでるよ〜
クルクル回ってる〜

さあ、冒険の始まりだ

綿毛たちは上手く風に乗って
新たな場所へと、胸を膨らませた


                   桜月夜

4/29/2026, 9:07:49 AM

   : 刹那


刹那にあなたの顔が脳裏にうかんだ

ボクはとても我慢強い
約束はちゃんと守る
今までも、そしてこれからも…

あなたの笑顔が見たくて
あなたを失望させたくなくて
ただ褒めてほしくて
辛くても、ひたすら我慢してきたんだ

昨日までは…

でもボクは今日 とうとう
あなたを失望させてしまった…

いい? 待てよ、待て!
まだ食べちゃダメだからね!

そう言い残して部屋を出ていったあなた
いつもは直ぐに戻ってきてくれるのに
今日はなかなか戻ってきてくれない

目の前にはボクの好物が、鎮座している
もう自分の意志で、ヨダレは止められない

忠誠心が、滲んでいく…

ダメだ、食べちゃダメだ

しかし気づけば、モグモグしていた
あなたの歪んだ眼差しをうけながら…

いや、待てが長すぎるってぇ~


                  桜月夜

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