毎回鏡を見ると思う。
なんで女に産んでくれなかったんだ。
女に生まれたら楽だったかな。
「女みたい」って、言われなくてもいいだもんね。
女性っていいよね、
グループでも楽しそうに話して、
休日、皆で遊んだりするんだよ。
可愛いねって言われても
別に嬉しくないし。
だって僕は男の子なんだよ。
女の子じゃないのに、
小さい頃から、かわいいかわいいって
みんなには女の子に見えてるの?
今日もかが見に問う。
「僕、女の子に見えますか」
1人で「男の子だろ?」と返事をして納得する。
1つため息をつく。
先生、心の健康が保たれてません。
先生、たすけて
先生、先生、
だいすきです
視線の先
やめろよ。
やめろって!
声が出ない。
動けない。
目の前にいるのに
行動できない。
俺のせいで、俺のせいでまた
人が死ぬ
「どーした」
「ん?」
「なんかあった?」
「ううん、大丈夫!」
「誰にされたの?」
「なにがー?」
「隠してるつもり?」
「…だって」
「だって?」
また、莉久が俺を守って、また莉久が…
「なんで泣いてるの…?」
「やっぱり、やっぱりなんでもない」
「…はぁ、顔の傷、やったの誰」
「こ、これ…は自分で…」
「言って」
「岩田…さん、」
「ちょっと行ってくる」
「行かないで!」
なんでそんなに怒ってるんだよ…
「岩田に伝えたいことあるからさ」
「なんていうの…?」
「内緒」
「俺も行く。」
「あー、わかった」
「あ、ふたりともー笑なんの御用?」
「あのさ、もう終わりにしようよ」
「莉久ちゃんいきなりどーしたの?笑もしかしてそいつのこと守ろうとしてる?だったらやめとけよ!守る価値ねーぞ」
「そ…うだよね…笑」
分かってるよ。自分が1番。
莉久みたいにイケメンじゃないし、運動神経良くないし、頭悪いし、弱いしさ。誰も守れない。
俺なんていない方がいいかもしれないな。
「おいおいー笑
莉久ちゃん♡よそ見してる間に朔ちゃん死んじゃうよー?笑」
「は?ふざけんのも大概に…」
「見てみろって笑」
「莉久、俺もう終わりにするね!今までありがとう。楽しかった。」
「おまえさ…あほかよ。」
「離してよ…」
「絶対離さない」
「お願いだから」
「じゃあ俺も一緒にここから落ちるよ」
「は…?」
「朔が死にたいって言うなら俺も一緒に死ぬよ。離さないって言ってんだろ」
「それは…だめ、」
「なんで?俺の自由でしょ。」
「だめだよ…」
「朔…死なないで欲しい…」
そんなふうに泣かれたら、悲しくなるじゃん。
「莉久…お、俺さ、生きてる意味…ある?」
「ある」
「でも俺がいると莉久が…」
「…お前さ、ほんとむかつくよ。なんでいままで俺がお前を守ってきたか全然理解してねーじゃねーかよ。自分が何をしたらどうなるかなんて分かってんだよ最初から。んな子供じゃねんだよ。承知の上で朔についてんの、朔より大切なものなんて俺には…俺にはないんだよ、」
今まで莉久がどんな思いで…
おれ、全然わかってなかったな。
「ごめん。」
「生きてる意味あるとか一生聞くなよ」
「うん」
「はやくおりてきて」
莉久がどれだけ俺に気を使ってくれてたか今わかった。
「朔、学校行くのもうやめよっか。」
「え、?」
「朔の両親も俺の親も、説明すれば理解してくれると思うよ」
「そうだね」
「バイトしよ。2人で」
「いいね」
「俺から離れないでね」
「うん!」
学校とか友達とか考えるのなんてもう終わりにしよ…
どうでも良くなってきたし
莉久だけを見て生きていこ。
そう決めたから
決して道を外さないように。
「もがいて苦しんで涙が止まらなくてさ、いらいらしてつい怒っちゃって、どうすればいいのか分からなくて、頭おかしくなっても手を取り合って生きていく。それが、人間だと思うよ。」
朝会で先生が言ってた言葉。
「ねえ、手繋ご」
「なんで?笑」
「俺たち手を取り合って生きていくから。」
「あー、朝会で言ってたやつ?」
「うん」
「いいよ?」
「ありがと」
「手を取り合うって、手を繋ぐとはちょっと違う気もするけどな笑」
「じゃあどーするの?」
「んー、助け合ったり支えたりする事じゃない?」
「そっかー笑」
「お前、可愛いな」
「じゃあ、俺今手繋いでたら暖かくて安心したから、支えてる感じするね」
「そうだな笑」
「うわ、またイチャイチャしてるわ笑」
「マジできしょいよな」
「特に背が低い方なw」
「おーい!ぶーす!!」
「ホモが!きもいんだよ!」
そう言われた時、俺といたらからかわれるんだ。
そう思った。
手を取り合って生きる。
その相手が俺じゃないのかもしれない。
「手、ごめん。ありがとね」
「…」
「離して」
「離さないよ」
「お願い、莉久まで言われちゃうよ。」
「別にいい」
莉久が向き合ってくれるなら、
俺も精一杯手を取り合って生きて行こう。
そう思った。