もっと知りたい
ふと気づけばいつもあの子のことばかり
考えていた。
家に帰る時も、お風呂でのんびりしている時も
今日は何していたかな1日幸せだったかなと
考えてしまう。
もっと知りたい気持ちの正体に気づくのは
あと少し。
平穏な日常
舞踏会に来ている私はもしかしたら素敵な出会いがあるかもとチャンスを掴もうとしていた。
その一方で本当にこれでいいのかという想いもあった。
思い出すのは、いつもそばにいて励ましてくれて
私がお茶を淹れると美味しいと笑顔を見せてくれる
魔法使いのあの人の姿だった。
「やっぱり戻ろう」
煌びやかなお城や王子様はもちろん素敵だ。
だけど、私には魔法使いさんと共に過ごす
何気ない平穏な日常が大切だと気づいたのだ。
もしかしたら、驚かれてしまうかな。
物語の結末は、王子様と幸せに暮らしましたとは
限らないでしょう?
12時の鐘が遠くなる中、かけがえのない彼の元へ
駆けていった。
過ぎ去った日々
前のスマホのカメラロールにはあの人との
思い出がたくさん残されていた。
「私もこの頃はたくさん笑えていたのにな」
過ぎ去った日々を懐かしく思い戻りたい
あの人にもう一度だけ会いたい
報われぬ願いばかり溢れていく。
私の中にある恋心は、あの日のまま
止まってしまったのかもしれない。
月夜
「こんばんは、吸血鬼さん」
夜になると、私の部屋の前に彼は現れた。
私の声にふわりと微笑み、優雅なお辞儀で返した。
現代社会では見慣れない貴族のような衣服
風になびく真っ黒なマント
ふわふわとした白髪に美しい目鼻立ち。
側から見れば人間と変わらない。
だが明確に違うのは牙があることだ。
闇に紛れて生きる吸血鬼。そんな彼は私の恋人である。
初めて会ったのは1年前の満月が美しい夜だった。
最初に血を吸われた時は驚いたけれど、数を重ねていくと献血に似たものだと思えば怖くなかった。
吸血後にふらついた時に抱き止めてくれたこともあった。大丈夫かと聞くように私を見た瞳は優しさに溢れていた。今思えば、その時から彼に恋に堕ちて囚われていたのだろう。
そんな事を考えていると、今の自分だけを見ろと言うように指を絡められた。
繋いだ手に温もりはないはずなのに、温かく感じるのはそれほど彼に愛しさを感じてしまったからなのだろう。
好きと伝えるように見つめると、どちらからともなく口付けを交わした。
彼といられる夜がいつまでも続けばいいのに。
赤い月だけが、私たちを見つめていた。
たまには
夜になり、家族におやすみと告げて自室に向かった。
部屋の窓を開けて月を眺めながらお気に入りの小説を読む。
静かな夜を味わうのもたまにはいいものだ。