I LOVE…
溢れるくらいの想いを貴方に
こんな夢を見た
何度目かの悲しくて温かい夢を見た。
私の隣には、笑顔で笑い合いながら
話をしていた女性がいた。
一緒にいて柔らかな日差しに照らされてる
温かい気持ちになる。きっと私の大切な人なんだろう。
でも、笑っているのはわかるのに
誰なのかはわからない。
私はこの人を知るはずがないのに。
私の今大切な人は、主様なのに。
どうして貴女といると温かいの?
貴女は、一体誰なの?
目を覚ますと、いつも通りの部屋。
私の主である彼は、まだ戻ってきていない。
私と主様は、夜の闇でしか生きられないのに
なぜ私は人間のような夢を見たのだろう?
「私は…何かを忘れているの?主様に愛されているのに、今幸せなのに何で?」
今の幸せと夢の温かさの狭間で、私は途方に暮れてしまった。
特別な夜
10月31日。人の世界と人ならざる者の世界の境目がなくなる夜。
私は、運命の再会を果たした。
会いたくて会いたくて仕方がなかった。
生きる世界が違う私たち。
せめて今夜だけは、2人だけでいさせて
紅い月の輝く特別な夜に、永遠の愛を囁いた
閉ざされた日記
「よいしょっ…と。おばあちゃん、だいぶ片付いてきたね」
部屋の棚に最後の1つの物を入れて、祖母に話しかけた。
「そうだね。来てくれたおかげで早く掃除が終わったね。ありがとう」
嬉しそうに笑う祖母を見て、私も嬉しくなる。
私と祖母が掃除していた部屋は、旅行が趣味の祖父母が色々な地域から購入した思い出の品でいっぱいだった。
日本のくまの木彫りや日本人形もあれば、海外で手に入れた絨毯や綺麗なブローチがあった。
地元にいながら色々な世界を旅した気分に浸れるのは、この部屋のおかげだった。
ふと、さっき片付けた棚に目をやると鍵付きの日記帳があるのに気づいた。
「おばあちゃん、こんなところに鍵付きの日記帳てあったんだね。これおばあちゃんが書いていたの?」
「ああ、この日記帳はねずっと昔に大切な友人からもらったのよ。私が困ったら、開いてねって」
不思議な模様が描かれた表紙を、祖母は優しい眼差しで見つめていた。きっと大切なものなんだろう。
「そうか、おばあちゃんにとってお守りみたいな日記帳なんだね。」
閉ざされた日記帳には何が書いてあるかは、祖母とその友人にしかわからない。けれど、2人にとってかけがえのないものであることが伝わってきた。
木枯らし
木枯らしの吹く夜、私は1人で街を彷徨っていた
どこにも居場所がなく苦しかった。
「誰も、私を辛さわかってはくれないんだ…」
気づいたら、見覚えのない屋敷の前にいた。
驚いていると、ちょうど誰かが屋敷の中から現れた。
黒いローブに、雪のように白い肌、真っ赤な瞳。
やばいと思った時にはもう遅かった。
気づいたら、私は今まであった辛い話を全て話していた。
「あのさ。そんなに辛いなら…もう人間なんか辞めちまおうよ」
「は…?」
人間を辞めたいとまでは考えてない。
「無理にとは言わないよ〜。でも、そんなに苦しく心が血を流しているなら、辛くて仕方ないならさ、輪廻の輪から外れて俺の仲間にならない?」
それに、俺手下を作らないとクビになっちゃうんだよねぇって冗談めかして言った。
彼の手を取ってからのことは、あまり覚えていない。
ただ、私の目の前は赤く染まったかつての同胞で溢れていた。
私は空腹が満たされた気持ちと同時に、もう二度元には戻れない一線を超えたことに気づいた。
苦しい時に差し伸べられる手は楽園か地獄か。
もし人間を辞めてしまおうと言われたらあなたは抗えますか?