夢と現実
私は、誰かと一緒にいるんだろう。
横に並び、笑い合っている。
でも、顔がよく見えない
声も聞こえなくなっていく
夢はそこで終わった。
目が覚めるといつも通りの朝
温かくもどうしようもない虚無感に襲われる
いつも夢に出てくる誰かを思い出そうとすると
毎回ひどい頭痛に襲われる
まるで、思い出してはいけないというように
でもいつまでも考えてはいられない
今日という現実を生きていかなくては
胸の奥に小さなしこりを残したまま
布団から旅立った
さよならは言わないで
魔法界から修行にやってきた魔法使い見習いのあの子との出会いは突然だった。
最初は戸惑った。だって魔法使いは本当にいるとは思わなかったから。私の家族もびっくりしたことを昨日のように覚えている。
魔法を見て目を輝かせた私を、あの子は微笑んで見つめていた。
戸惑いながら一緒に暮らし始めた春、花火や海と思い出を作った夏、美しい景色を観に周った秋、将来の夢をたくさん語り合った冬、数えきれない思い出ができた。
出会ってそろそろ1年が経つ頃、私はあの子から修行が終わったから魔法界に帰らなければいけないと言われた。
わかっていた。あの子はいつか帰る日が来ることは覚悟はしていた。それでも…
やっぱり別れは辛い。その晩、お別れは嫌だと一緒に泣いた。
どうかお願い、さよならは言わないで。
私のかけがえのない人。
落ちていく
人生は舞台に例えられることが多い
セリフや演出の違いで、全く違った世界観になるように
その人の選択や出会う人によって全く違う人生になってしまうからだろう。
私も少し前まで舞台上で演じられていたと思う。
でも、ある日奈落に落ちていくような感覚があった。
周りの舞台はどんどん展開が進んでいく。
自分だけが落ちていく恐怖に支配されてていく。
どうしよう、次の展開が思い描けない。
軌道修正するため、一旦裏に回って頭を冷やすことにした。より自分に合った舞台を作るために考えなおした。
演じる時に無理していないから、表情にゆとりを持てるようになった。
いつか、他の誰かに手を差し伸べられるそんな舞台にしたい。
たくさんの想い出
カメラロールには、あの子と過ごした日々がぎっしり詰まっている。
これから先、人間界が恋しくなった時は想い出の写真たちを見て幸せだったと思う日が来るのだろう。
いつか出会う人たちにもたくさんの物語を聞かせてあげよう。
子猫
「わぁ、子猫だ!」
弾んだ子どもの声が聞こえた方に行くと、小さな女の子たちとその親らしき人がいた。
これが、僕と家族の出会いだった。
彼らはご飯をくれて、一緒に遊んでくれた。
しばらくして、僕は彼らの家族になった。
たくさん一緒に遊んでくれて、優しく撫でてくれるこの時間が1番幸せだった。
みんながお休みの朝は、なかなか起きてこなくて起こしにいったこともあった。
テレビに出ている猫を一緒に見た。
寒い日は、お布団の中に入れてくれた。
「温かいね、ありがとう」
温かいのは僕の方だ。大切な思い出をくれたこんなに素敵な家族に出会えたのだから。
僕の家族と出会って、そろそろ20年になる。
僕を愛してくれたみんなには、ずっと幸せでいてほしいな。