暗がりの中で群れている彼らは、潰れた百貨店のショーウィンドウを横目に進んでいく。その無言の雑踏を、誰のものでもない夜さえ拒むのは、彼らのふざけた思想が一般に共感されるものではないからだろう。
先の革命で街灯は壊れてしまった。真っ暗闇で彼らは隣にある顔も見えていない。それでも歩く。まもなく始まる自己満足は、あの日、断頭台の上でも笑い続けた彼女へ向けて捧げられる。
紅茶の香りにうっとりしすぎて
ティーパックを取り忘れた君が
渋さに眉を顰めるまでの一部始終を
いつのまにか目で追っていた
君の一挙手一投足、全ての特徴に
再認識する心…やっぱり
何度も覗き見た顔なのに
夏休みの後半には思い出せなくて
その程度だったのだと安心したのに
冷めた紅茶の口あたりくらい好きだった
今じゃもう…
どこまでも続く青い空の麓を探しに電車に乗った
着かなくてもいい 見つからなくてもいい
らしく生きられれば らしさを思い出せたなら
声が枯れるまで鳴いていたししおどし
唇ぬらすだけの水の流れ
時間のようだね
冬までに畳む旅館の庭は
不安げな寒空から吹く風で褪せる
強い寂しさを裏腹に
ぐったりとした諦念が汲まれるが
いつも通り背筋を伸ばして
テキパキとした女将の姿勢を見ては
誰も野暮をしようとしなかった
古時計のコンセントが抜かれようと
ショベルカーが苔をめくろうと
ししおどしがもう鳴らなくとも
ただ確かにそこにあった
ししおどしの声はまだ
どこかへ振動している
忘れたくても忘れられないなら
土に潜ろうぜ!
草の根が張って無いところに頭から
Tシャツ、短パン、サンダル、風呂上がり
コンビニ行くんかと思わせてみっともなく
土に潜ろうぜ!
口の中がジャリジャリしてきたら
そろそろ窒息しないように気をつけて
あてもなく掘って掘って
爪に入った土とかどうでもいいから
無我夢中に!
明日吹く風なんて置いてきてさ
いずれ全身埋まったらどうする?
何から忘れる?
でもさ
深く深くに蒔いた種が萌えたら
そしたら もう
花が咲くまで待ってもよくない?