georgetaro

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声が枯れるまで鳴いていたししおどし
唇ぬらすだけの水の流れ
時間のようだね
冬までに畳む旅館の庭は
不安げな寒空から吹く風で褪せる
強い寂しさを裏腹に
ぐったりとした諦念が汲まれるが
いつも通り背筋を伸ばして
テキパキとした女将の姿勢を見ては
誰も野暮をしようとしなかった
古時計のコンセントが抜かれようと
ショベルカーが苔をめくろうと
ししおどしがもう鳴らなくとも
ただ確かにそこにあった
ししおどしの声はまだ
どこかへ振動している

10/21/2023, 2:09:39 PM