どこまでも続く青い空の麓を探しに電車に乗った
着かなくてもいい 見つからなくてもいい
らしく生きられれば らしさを思い出せたなら
声が枯れるまで鳴いていたししおどし
唇ぬらすだけの水の流れ
時間のようだね
冬までに畳む旅館の庭は
不安げな寒空から吹く風で褪せる
強い寂しさを裏腹に
ぐったりとした諦念が汲まれるが
いつも通り背筋を伸ばして
テキパキとした女将の姿勢を見ては
誰も野暮をしようとしなかった
古時計のコンセントが抜かれようと
ショベルカーが苔をめくろうと
ししおどしがもう鳴らなくとも
ただ確かにそこにあった
ししおどしの声はまだ
どこかへ振動している
忘れたくても忘れられないなら
土に潜ろうぜ!
草の根が張って無いところに頭から
Tシャツ、短パン、サンダル、風呂上がり
コンビニ行くんかと思わせてみっともなく
土に潜ろうぜ!
口の中がジャリジャリしてきたら
そろそろ窒息しないように気をつけて
あてもなく掘って掘って
爪に入った土とかどうでもいいから
無我夢中に!
明日吹く風なんて置いてきてさ
いずれ全身埋まったらどうする?
何から忘れる?
でもさ
深く深くに蒔いた種が萌えたら
そしたら もう
花が咲くまで待ってもよくない?
やわらかな光が白く塗りつぶしたのは
明け方のうちに降られた商店街
風が出てきて雲で翳り
アスファルトが増えていく
光の世界が去って行く
そういえば小学二年生のときには
追いかけても間に合わなかった
もう一度追いかけてみようか…
ふと前を見ると信号が青になっていた
会社に行かなきゃ…会社に行くか…
高く高く空を登る繊維
幼子だったのは遥か昔数秒前
定刻通り 一切のキモさなく
線たる線であることを強いられている
自覚的な彼らは
自身が持たない欲望にまみれ
むず痒い体表のほつれを捩っては
よじれて 解けかけて
四時の方向へと進む
秋晴れ 夕暮れ
下で寝ぼけて絡まる酩酊の兄弟達には
子供の駆け足が聞こえたらしい
行こうよ まっすぐ 圧縮へ
重力を捨て大気圏越えて
天体掠める光のように
行けるよ まっすぐ 圧縮へ
どやされても気にせず
潰れても面倒がらず
立ち上がる
湿気るまでは飽きぬ 性分だからこそ