ずっと名前を考えていた。
君と出逢った場所にいるときの自分の名前を。
本当の名前、いつも使っているものでもよかったけれど
君は違うでしょう。
君が違うのなら、自分も違うものがよかった。
正しいことも正しくないことも君とお揃いがいい。
柊月(ひづき)にする。
君が呼んでくれる名前と、月。
初めて君と見た満月が綺麗だったから。月を見るたびに
あの日の夜を思い出すから。
思い出す口実を増やしたかったのだと思う。
それくらい、あの夜は特別だった。
いつかそれを言葉にして、文にして、君に届けたい。
バッドハッピーエンドが好きだった。
誰がどう見てもバッドエンドだけれど、見たあとに
ほの暗い光が宿るような。そんな物語が好きだった。
君との物語は、ハッピーエンドがいい。
そう思ってしまう自分は傲慢だったりするのだろうか。
貴方の抱える憂鬱が
その身に、心に、降り注ぐ苦痛が
風に飛ばされ、雨に流され
太陽の元を笑顔で歩けますように
音楽だったり文学だったり芸術だったり。
そういうものに救ってもらうことの限界を知っている。
知っていて、見て見ぬふりをして生きてきた。
暗い世界に一人で落ちていって。
上の方にある明るい場所に手を伸ばす。そこには、そう
いうものがいる。でも、明るい場所に引き上げてくれる
ことはない。
暗い場所に一人でいるための手助けはしてくれるけれど
明るい場所への行き方を教えてはくれない。
結局、人なんだ。人を生かすことができるのは。
残酷で優しい真実だと思う。不純で綺麗な世界を作っているとも思う。それがいいのだと、思っていたい。
夏の花火を嫉ましいと思う自分も
貴方にひどいことをしたあいつも
消したい過去も怖い未来でさえも
全部壊して殺してしまえたらいいのに
きっとそんな行為に意味はない
言葉ではなく力に頼った自分は嫌われてしまう
それでも時折思う
壊すことなんて、殺すことなんて、簡単だから
守り方がわからない
そもそも守られたいなんて思っていないのかもしれない
無力だ
どうしようもなく無力で、脆くて、弱い
血が止まらない
涙はずっと前から止まってくれない
どっちが悪いことなのかはわからない
加減を知らずにいられるほど馬鹿ではないけれど
加減を覚えられるほど利口な人間ではなかったらしい