窓越しに見えるのは
電車を辿って旅に出る。
ふと、窓ガラスを通って見える未来があった。
妄想、空想、夢の続きと人は言うだろう。
でも、ああ、そうか。
君の隣に並ぶことが怖い時だって、君はずっと隣にいてくれた。
私はその未来を信じたかったんだ。
あの頃の私へ
早く大人になりたがっていた、小さくてものすごく元気だった頃のわたしへ。
今、少し言葉を送ります。
もうこれを書いている前から、私はとっくに大人です。
何が、というとむずかしいです。
子どもと言われる歳を過ぎ、大切な家族や、大切な動物たちを見送った、というと、小さいわたしはおどろくでしょう。
わたしが思い描いていたような大人になれなかったこと。諦めたのは夢だけではないことや、他にも色々とあります。
苦さを知ることは大人になることなのか、まだ私にはわかりません。
小さなわたしが私の話を理解したなら悲しむかもしれませんね。
とはいえ、目まぐるしい日々にきっとすぐに忘れることでしょう。
こんな言葉が届くなら夢の中でしょうから、それならば明日のために、今日のためにゆっくりと眠って下さい。
おやすみなさい。どうか続きはいい夢でありますように。
逃れられない
あなたは言う「逃れられない」と。
私は疑う『本当にそうだろうか』と。
けれどあなたが心底思い込んでいるなら、それは確かに真実で。
私がわずかにでも疑っているのなら、それも確かに真実なのだ。
ねえ。私はどちらが真実だろうと、結果としてあなたが幸せなら、それこそが一番いいと思うんだよ。
また明日
短くて易しくて難しい、小さな約束。
「また明日ね!」
会おうだとか、話そうだとか、何かを共有しようだとか。
そんなのひっくるめての別れの挨拶。
ささやかな再会を望む言葉。
「また明日!」
子供らが同じ言葉で手を振り合う。
そういう情景が似合うのは、きっと今のような夕焼け前の公園などだろう。
季節が移ろって時を重ねても。
“明日”が“今度”に変わっても。
今のような笑顔がこの子達に続いたらいいなと、私は通りすがりにかすかに願ったのだ。
理想のあなた
想像の中でいくつも、何度でも理想のあなたを作り上げた。
そのたび私は自分に問いかけることになった。
「あの人への理想だけの塊なんて、今まで一体どこにあったの?」と。
えくぼの無いあなた、苦いコーヒーが好きなあなた、大人っぽいあなた。それから……。
理想のあなたを手放せたのは、あなたがいつも等身大の私を見ていてくれたおかげ。
そうでなければ、今でも理想は育ち続けていただろう。