夏の忘れ物を探しに
あの夏。
制服のポケットの、切符を取り出した時に零れ落ちてしまったもの。
駅の改札前に落としたもの。
駅には誰もいなくて、片道切符だから、
取りに戻れなかった。
今の私には、あの頃の青い春はないけど。
ワンピースのポケットから、定期を取り出す時、
何も零れ落とさないように。
なぜ泣くの?と聞かれたから
隣にいて。と答えた
君の名前を初めて呼んだのは、もう覚えていない。
でも、物心がついたときには、もう呼んでいた。
それからずっと。
誰かの前でも、心のなかでも、君の名前を呼んできた。
この世に生まれて、最初に贈られたその名前を、
その名前に込められた思いを、
今までその名前と歩んできた軌跡を、辿るたびに、
君のことを愛おしく思うんだ。
普段はそんなこと、意識しないけど。
匂いはないし、触れない。
でも、形は確かにあるし、音だって聞こえる。
そんな君の名前は、、、
朝焼けを見にいこう、と思って。
早起きして、始発に乗った。
でも目的地に着く前に、日が昇ってきてしまった。
電車の車窓に、ビルの間隙を縫って、光が届いた。
紺碧の空に、光の線が四方八方に広がって。
その一部が、私に差し込んだかのように思えた。
胸を打たれた。日の出は、朝日は、こんなにも美しいのだと。
朝が来なければいい、なんて思うこともある。
だけど、この美しさを知れたなら。
少しは明日に希望が持てる気がする。
選択するってことは、何かを得て、何かを失うこと。
得られたはずのもの、持っていたものを手放すということ。
人生は選択の連続である。
それは、
夜何時に寝て、朝何時に起きるとか、
おやつを食べるか、食べまいかとか、
日常の些細なことから、
進路先をどのように選択するかとか、
何の授業を取るか、
といった大きなことまで。
私は今、こんな時間まで起きてスマホを触っているわけだけれども、
健康を手放しているんだよな。