禁断の果実が梨だったら。
アダムとイヴは楽園を追放されなかっただろうか。
梨の旬が他の季節だったら。
ここまで人気にはならなかっただろうか。
梨の名前が「なし」ではなかったら。
スーパーにはなんて名前で並べられたんだろうか。
梨の色が赤だったら。
りんごの一種として扱われただろうか。
そんなことを考えても、梨は梨であり、何かが変わることもない。
私たちは、私は私であり、何かが変わることもないのに、「ああしてたら」「こうしてたら」と考えてしまう。
梨は梨であり、私は私である。
イヴが私で、アダムがあなただったら。
いつまでも楽園という名の監獄にいれたのだろうか。
もし私がイヴだったら。
禁断の果実なんか食べないのに。
秋ってなんか寂しい。人肌が恋しくなる。
落ちるのが早くなった太陽。
なんだか私だけ夜の暗闇に取り残されたみたい。
髪や、服と肌の間を縫う風。
その隙間になんだか胸が締め付けられる。
心なしか木々や葉も元気がなくて。
ぎゅって抱きしめてほしくなる。
そんな存在がほしくなる。
普段は見て見ぬ振りをする心の傷も、秋には自我が芽生えて私の心を悩ます。
出会ってから半年経って遠慮がなくなった友達。
信頼されてるのか、はたまた適当に思われてるのかわからない。
何を考えてるのかわからない想い人。
行動だけじゃなくて言葉でも伝えてほしいのに。
秋ってなんだか寂しい。
爽やかな風が、私の頬を撫でた。
夏の忘れ物を探しに
あの夏。
制服のポケットの、切符を取り出した時に零れ落ちてしまったもの。
駅の改札前に落としたもの。
駅には誰もいなくて、片道切符だから、
取りに戻れなかった。
今の私には、あの頃の青い春はないけど。
ワンピースのポケットから、定期を取り出す時、
何も零れ落とさないように。
なぜ泣くの?と聞かれたから
隣にいて。と答えた
君の名前を初めて呼んだのは、もう覚えていない。
でも、物心がついたときには、もう呼んでいた。
それからずっと。
誰かの前でも、心のなかでも、君の名前を呼んできた。
この世に生まれて、最初に贈られたその名前を、
その名前に込められた思いを、
今までその名前と歩んできた軌跡を、辿るたびに、
君のことを愛おしく思うんだ。
普段はそんなこと、意識しないけど。
匂いはないし、触れない。
でも、形は確かにあるし、音だって聞こえる。
そんな君の名前は、、、