ページをめくる。
図書館の中では静けさが保たれていた。誰もが声を発さずに黙々と本を読む。私もその一員だ。
私は少し薄めの本(決して卑猥ではない)を読み進める。ここでは、あまり多くの時間を費やし本を読まない。長時間に渡って本を読むのもいいのだが、家で読むほうが集中できる、いや自分の世界に没頭できるのだ。
では何故ここで本を読むのか。そうだな·········耳を澄ませてみよう。静かな図書館にも音が潜んでいる。足音、本をめくる音、壁に遮断されているが貫通する雑音。それは不協和音ではなく、自然の中のある───水のせせらぎや木々の揺れ擦れるような───心地の良い音だ。つまりは私にとってこの図書館は大自然そのものでありその環境音を聞きにわざわざここに来るのだ。
ページをめくる。
そして私もその一人となり、沈黙の中、不意にそれらと一緒に音を奏でるのである。
夏休みが終わり学校へ通う日常が戻った。
夏の季節の残り香は漂い、後悔の思いを呼び起こす。
眠れない。
満足のいかないが毎日、このままでいいのか?
空が星を持ち去った。
午後にセミは鳴く。
帰り道で思う。
帰った後、何を目標にするか。
快晴。
まだ未来の幅は広いのに、いやだからこそ無気力になる。
夏の猶予は通り過ぎた。
首元を掴まれ前に投げ出されたような気持ち。
痛い、なんで、という後悔が堂々巡りする。
夏には戻れない。
が、終わりない夏を夢見る。
快晴の先には何が見えるのだろう?
夢はじゃない現実を夢に置き換える、
───それは間違っているだろうか?
幻想は儚く、
生存できない、
現実に寄生しないければ。
夢は胸の中に、
閉じ込めたら、
死滅する。
もし長年、
生き残っているなら、
それは死体だ。
でも現実を夢に捧げるのは、
現実から離れ、臆病から離れ、
勇敢になる、と同時に、
破滅の道であるのだ。
夢は生かさず殺さず現実に付き合わせるくらいが一番、だと私は思う。
「最初から決まっていた」と死にかけの魔王は言った。
「倒されることは分かっているのだ」魔王が続けて言った。
勇者は無言。
「じゃあ、何故、知っておきながら歯向かうか───誇り、のつもりだよ」
勇者は無言。
「誇りというのはな、生きる意味を指す、が生きなければ意味がない───」
勇者は無言。
「───と私は思わない」
勇者は無言。
「誇りは、次に、託すのだ·········」
勇者は無言。
「·········」
魔王も無言、いや話せない。
勇者はゲームをクリアした。
勇者の冒険は引き継ぐことなく、そこで終わった。
プレイヤーは達成感を得たが。
またね、という声に僕は引き留められた。
後ろへ振り向いた先、そこには誰もいなかった。
翌日の帰り道に僕は同じ声に引き留められた。その声はどこか聞き覚えがあるが思い出せない。
やはり振り返っても誰もおらず踏切だけが見えた。
踏切を通り過ぎ、後ろから声聞こえた
それはあの人のではなく、カンカンと鳴る踏切の声だった。
今日はあの女性の声が聞こえなかった。
今日は電車が通るのを待っていた。
止まって気付いたが踏切には花束が置かれていた。
それ以来、ワンピースの女性の声は聞こえなかった。
───あれ?