『何でもないフリ』
この退屈な世界では無関心を貫けなくなった奴から消えていく
自分一人が何をどうしたって世界は変わりっこないのだから
何でもないフリをして日々を無意味に過ごしていれば良いのに
『冬になったら』
突き刺すような肌寒さが全身を襲う
目を覚ました私に突き付けられるのはキミが居ないという事実
隣で笑い掛けてくれた貴方は何処かへ行ってしまった
此処に在るのはそんな現実を受け入れられない子供のような私
季節は巡り何度目の冬を迎えただろう
けれど私の季節はあの冬で止まってしまったから
この寒さでまたあの頃を思い出しては空っぽの心で凍えるのだ
『懐かしく思うこと』
楽しかったこと、嬉しかったこと
全てを等しく過去へと追いやって
苦しいこと、辛いこと
この身を焦がす痛みを心へと突き立てる
あなたと居たあの時より楽しいなど在ってはならない
君と過ごした日々より嬉しいなんて有り得はしない
二度と手に入らないのだと決め付けた憧憬の景色を
いつまでも私は夢に見る
『行かないで』
あの時そう言えたら良かったのに
今頃になって後悔を募らせる
何度も君を夢に見る
それが無駄だと分かっていたはずのに
最後まで利口な私で居たいが為に
今なお続く責苦に苛まれたまま
また喉まで出かかったこの言葉を飲み込んだ
『鏡』
床に叩き付けられて砕け散る鏡を
私はまるで他人事のように眺めていた
衝撃で宙を舞う欠片はキラキラと輝いており、
時折写り込む私はというと見るに堪えない
醜悪な表情を浮かべていた
私は私が嫌い
だから私の生き写したる鏡も当然嫌いだ
どれだけ取り繕ったっていずれ本性は明かされる
鏡に写る私が本物の私だ
皆のいう他人に無関心な私なんて何処にも居やしない
苛立つ心に埋め尽くされる破壊衝動
そんな顔で私を見るな、と私は私自身を壊した
偽物の私は本物の私を殺して高らかに嗤う
また私は嘘を一つ重ねる
それを知るのはきっと、粉々に砕けた私だけ