10/25/2023, 9:01:49 AM
◤行かないで◢
――行かないで。
何より言いたかった言葉を、喉の奥へと押し込んだ。
「ごめん」
君のために、そう言うのが精一杯で。
一度だけ振り向いたその顔は、泣きそうに歪んでいた。
10/22/2023, 7:43:29 AM
◤声が枯れるまで◢
『バイバイ……またね』
あの日なにか言いたげな顔をして、でも君はただ手を振った。
困ったように眉尻を下げた笑顔は、なにかを隠している表情だ。
それがなにかなんて本当はわかっていたのに。
俺も伝えたいことはあったのに、ただ笑って手を振り返した。
関係が変わるのが、怖かった。
もう会えなくなるよりも、怖かった。
あの時呼び止めていたら、どうなっていたんだろう。
去っていく君の背中に何度も何度も呼び掛ける夢を見る。
何度呼んでも振り向いてはくれなくて、それでも俺は何度も何度も、声が枯れるまでその名前を呼んで。
あの日出せなかった勇気を今頃になって出したって、もう遅い。
夢の中の君はきっと、一生振り向いてくれることはない。
10/20/2023, 9:18:24 PM
◤始まりはいつも◢
名前は?
一緒に帰ろう
連絡先教えて
今度遊ぼう
家来る?
好きだ
手繋ごう
キスしていい?
――別れよう
すべての声を、覚えている。
始まりは、いつも君からだった。
10/19/2023, 8:24:45 PM
◤すれ違い◢
僕が君を好きだったとき、君には好きな人がいた
君が僕を好きになってくれたとき、僕にはもう恋人がいた
きっとずっと、交わらない運命
10/18/2023, 1:00:05 PM
◤秋晴れ◢
銀杏並木を一人で歩く。
黄色の葉の隙間から降り注ぐ木漏れ日が暖かい。
緩く風が吹いて、枯れ葉が舞い上がった。
――次は二人で来よう。
すべての葉が落ちてしまう前に。
『土曜日空いてる?』
メッセージを送って10秒後。
手の中の携帯が震えた。