◤声が枯れるまで◢
『バイバイ……またね』
あの日なにか言いたげな顔をして、でも君はただ手を振った。
困ったように眉尻を下げた笑顔は、なにかを隠している表情だ。
それがなにかなんて本当はわかっていたのに。
俺も伝えたいことはあったのに、ただ笑って手を振り返した。
関係が変わるのが、怖かった。
もう会えなくなるよりも、怖かった。
あの時呼び止めていたら、どうなっていたんだろう。
去っていく君の背中に何度も何度も呼び掛ける夢を見る。
何度呼んでも振り向いてはくれなくて、それでも俺は何度も何度も、声が枯れるまでその名前を呼んで。
あの日出せなかった勇気を今頃になって出したって、もう遅い。
夢の中の君はきっと、一生振り向いてくれることはない。
10/22/2023, 7:43:29 AM