22.何でもないふり
僕は何でもないふりをするのが得意だ。
僕が小学生の時、両親が死んだ。
父と母、僕で出掛けていた。事故だった。
交通事故に巻き込まれて亡くなった。
僕はなぜか無事でいた。
悲しかったし毎日泣いてた。こんな不幸があるの
だろうか。
中学に入ってからは、いじめられ
「お前がこれだから親は死んだんだよ笑」とか
「やっぱり子が子なら親も親だな笑そりゃ死ぬわ笑」とか酷いことを言われた。でも僕は笑顔で返した。
なにか話そうとすれば泣き出しそうだったからだ。
こういう時にはなんでもないふりをしなきゃダメなんだ。そうしないと僕が壊れてしまう。
それとも、もう壊れてしまっているのではないか?
なんでもいい、なんでもないふりをしなきゃ。
21.仲間
仲間ってなんなんだろうか。
何でも話せて楽しいグループ?
それとも秘密を隠して気を使うグループ?
なんでもいい、それでも仲間が欲しかった。
僕はクラスでは独りだ。独り身。
多分いじめられてもする。まぁ教科書を隠されたり、
上履き隠されるぐらいだけど。
まぁそのせいで友達がいない。
家族もみんないなくなった。
僕は本当の独りぼっちだ。
寂しい…悲しい…1人は嫌だ…
部屋で独り暗闇で床にうずくまる。
いつも家に戻ると緊張が解けて泣き出す。
友達が欲しい…誰でもいいから大丈夫?って声掛けて欲しい…本音で話せる人が欲しい…
そんな人いないけどね。
そう思いながらいつの間にか寝ていた。
心は冷たいままだ。
20.手を繋いで
「お前ん家、おっばけやーしきー!」
君の耳元で叫んだ。君は何も反応がない。
いつものことだ。僕は死んでいるからね。
それはそうだ。っと肩をすくめて笑った。
僕は君の横顔を見る。前は恥ずかしそうに
「やめてよ。笑」って言っていたのに今はこんなに
近づいてもこっちを見ることはない。君に触れたくて
手を伸ばしてもすり抜ける。
わかっていることだが、やっぱり悲しい。
君は夜になると泣いていた。僕のことでね…
僕はいつも優しく声をかけてあげていた。
いつか君に声が聞こえると信じて
「いつも君のそばにいるよ。君を見守ってる。」
君は泣き疲れたのかそのまま寝てしまっていた。
僕は君をできるはずのないハグをして。
できるはずのない君の手を握った。
「もう一度、生きてる時に手を繋ぎたかったよ。」
と、僕は涙を流していた。
19.ありがとう、ごめんね
僕はいじめにあっていた。みんなはいじめる理由とか覚えてないと思うけど、僕ははっきりと覚えている。
中学一年の頃だったか、僕の口癖が「ごめん」だったことから目をつけられた。
「おい、早くパン買ってこいよ。」
一番僕を乱暴に扱う君。乱暴だけど君はとても
綺麗で、美しい顔をしている。見惚れていると君は
恥ずかしそうに目を逸らし「早く行くぞ。」っと
そう言って僕の手を引いて歩く。
その手は優しくて温かい…君の真っ赤な耳が見えて
ニヤニヤが止まらないでいた。
そんな時間が小さな幸せだった。
でも日に日にいじめはエスカレートしていった。
教室にいるだけでも辛かった。
ボーッとしながら帰っていたら突然、
視界が真っ赤になった。身体中が痛い。
あちこちの骨が折れていることがわかった。
事故ったんだ。そばには僕を乱暴に扱っていた君が、
泣いていた。顔を真っ赤にしながら…
(泣かないで。笑顔でお別れしようよ。)
僕は最後の力を振り絞って君に言った。
「ごめんね。ありがとう…君が好きでした。」
そう言って僕は旅立った。
君は声が枯れてしまうくらい泣いていた。
18.部屋の片隅で
片隅っていいよね。誰もいない静かな空間。
居心地悪い教室でも片隅は静か。落ち着く…
僕は1人でいたくなくて1人の子がいては
友達として仲良くしていた。
大人数の時は笑顔で、ちゃんと笑えてるか
わからないけどみんなの話をニコニコしながら
聞いてるだけだった。そんな自分が嫌いだけど、
こんなことしかできない奥病者だ。
ふと窓側を見ると、教室の片隅に空を見ている
君がいた。1人でも平気だという顔をしている。
その子がとても羨ましかった。
羨ましいけど、おまけに空を見上げている
君はとても綺麗だった。
いつか君みたいに1人でも平気な人になりたい。
そして君と話してみたい。友達になりたい。
そんなことを思いながら友達と思っている人の話を
ニコニコと聞き流している。