ひどいことが起こらぬように
首を括らないで
息苦しい妄想に使われても
願いを諦めないで
ほとんど邪悪なものを許してるから
今日も目を見れなかった
可愛い人を抱ける日はこないと
泣いたりして
明日戦争が起これば
きっと僕はひとりで行くかもしれない
卑屈な復讐の気持ちで
みんなを残して死ぬだろうか
だれか僕を助けて
言えないことばかり
僕はぜんぶあげるのに
きみの言葉だけで満たされるのに
空の部屋をつつんでいるのは
存在の底から感動した
あの日の光
白い骨を焼きつけた
支配からもっとも遠い場所
切り刻んだ僕の目を
見つめる目の中に
美しさを讃え
弱さを打ち明けて
ただ一回きりの交わりを
詩にするまで生きてみたい
でも
でも
わからないなら
生まれなかったのと同じ
会えなかったのと同じ
苦しくて
怒りなんてなくて
愛なんて居場所はつくれなくて
明日はもっと
良い人間になろうとか
思ったりしながら
仕事から帰り
洗濯機を回し
料理をし
洗い物を済まして
夜の星が増えていくあいだに
あなたのしっぽが
揺れていたりしてほしい
もう落ち着いたよ
インスタントの
キャラメルマキアート
その心と同じくらい素敵な
肌色の織布のうえに
舟を漕ぐような
眠りをもって
一日の世に
うずをまくように
明日はどこにいこうかな
いい企画展があったら
教えていただきたいけれど
ちょっとここでは
難しそうですね
#きっと明日も
ことばはしにました
もうはなしません
くるしむことでいきていた
くるしくないのでしにました
はだいろのはくしゅかっさいと
あかいろのうぶごえ
にごったよだれと
よるのひとみ
あなたはとてもきれい
こちらにきて
どこにもいかないで
あなたのくちで
わたしをきおくして
わたしのはなしをきかせて
#きらめき
僕はかつて存在しなかった。例えば路上ではたと足を止めて、名前も知らない花を見つめているこの心の及ぼす影響とは何なのかと自問するような時には、いつもそのことを考えた。例えば都市を行く君が、名も知らない君の姿が、僕のわきをすり抜けるでもなく、遠くにその姿が認められるでもなく、声が聞こえるでもなく、あるいは思考の面に浮かんだわけでもないのに僕の心の面をよぎって行ったような感触が残されて、何度も感動のふるえを握りしめるような折にはいつもそのことを考えた。僕は花びらの水滴に映り込んだ、無言の愛を目にしたのかもしれない。僕は砂漠を横断する旅人の脳裏に閃いたものと同じ、時間の構造を託されたのかもしれない。けれどそのことを忘れてやっと踏み出せる歩みが、僕の今日をも失わせる。僕は存在しているということは限りのないことだと思う。それはもしかしたら、存在しないということをこの宇宙において考えるために必要な限定性が、限りのない存在という願いの名においてしか実現し得なかった珍しい例なのだろうか。忘れてしまっても、狂ったりすることもなく生きていけるのは、そのおかげかもしれない。僕はかろうじて「こころ」と呟いてみる。その意味が消失してしまうまで、唇にそのかたちをとらせておく。存在しないためのことば、存在しないためのうた。心がそれを知っていればよかったと思う。あまりにも笑顔は素敵だから、帰る場所はいつもあるんだ。
#香水
それは人が作った石と言われている
誰もが人間らしい生活のできない時代に生まれても
立って、生きて、眠るのはその石の上とされている
ずさんに取り決められた持ち回りのように
いつかは海底にあった死の息吹さえ
やがて漠とした星々の間に逃れ去っていく
石は飲み込まれ、咀嚼され、吐き出される無限の輪を巡り
硬い硬い核への信仰を拾い集めている
これは強力な嘘なのだ
引力から成り立っている存在の脆さが
石の心地好い影を愛したのだ
含有された海が泣くとき
ぼくはその優しさのために泣く
閉じ込められたものが
閉じ込めたものを赦すように
永く濡れそぼつ星でぼくは
足元をみつめている
#雨に佇む
小さな電球が
小さな部屋の
小さな魂のうえで
理屈も通らない
世界から省かれた
配線を隠していたけれど
わたしは獣みたいに
災いの穴に潜ったあとの
記憶がありません
#やるせない気持ち