はじめ

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5/1/2024, 1:24:56 PM

【カラフル】

物の見えかたが、なんだかおかしいので眼科に行ったら、自分はどうやら異常に色を感じるようになってるらしい。
「色を、感じる?」
「うん、例えば」
サングラス(していないと、感じ過ぎる)を外し、彼女を見る。
「リップのピンクベージュ、アイラインの茶色、アイシャドウのベージュとピンクと上のラメと、チークの赤みとファンデーションのベージュが、一度に来て、あなたの顔が捉えられない」
更に、目の色髪の色服の色、そばの壁の色まで全て混ざって、ぐるぐるする。
「何だそれ」
笑う彼女を見ながら、サングラスをする。軽く頭痛がする。辛い顔を見て彼女が、
「ごめん笑って。ちょっと、理解不能で」
「分かる、自分でもそうだから」
ため息。これは治療できないようで、これからはこの状態と生きていかねば。
「日々、カラフルになっちゃったね」
彼女が取り繕うように言うのも、悲しくなる。
ああ、自分はどうなるんだろう。

4/29/2024, 12:39:28 PM

【風に乗って】

「……朝?」
昨夜、というか日付はもう今日だった時間に帰宅してから、ほぼほぼ寝落ちのように寝続け、気付いたら窓の外の太陽は高い。もしかしたら、おはようよりこんにちはのほうがふさわしい時間かもしれない。
(休日前だからって、仕事ありすぎだろ全く)
データ修正とか連絡とか、追われた結果がこれだ。体が、寝ただけでは疲れを癒せずにバキバキしている。ゆっくり、体を起こして、窓を開けると、風が吹き込んできた。涼しい。
「眠……」
目をこする。横になり、二度寝してしまおうか、と思った時。
『フレー、フレー、赤組!』
風と共に、そんな声が聞こえてきた。運動会か。歩いて行ける距離に、小学校があるから、そこかもしれない。
(フレーフレー、か)
思って、ちょっと口の中で呟いて。ゆっくり、立ち上がる。体力は完全には回復してないけど、何だか気力は回復傾向だ。
このまま買い出しにでも行こう。そして、小学校の近くを通って、応援でもするか。そんな事を思いながら、着替えようとクローゼットに手をかけた。

4/29/2024, 2:45:36 AM

【刹那】

一瞬目が合って、そして視線が離れた。
ほんの僅かな、瞬きにも近いその時間。
刹那な時は、永遠に近い。

4/27/2024, 1:14:26 PM

【生きる意味】

「生きてたって仕方ないよ」
そう、私が口にすると、彼は紙パックの苺オレのストローから口を離した。なんで?と言いたげに首を傾げるので、
「学校も家も、私がいなくてもいいみたいだし」
そうまるで、空気のように、いないものとして、目があっても誤ってぶつかっても、誰も何も言わない。学校内でだけならまだしも、家でも似たようなもの。食事は最低限、部屋も物置と同じだし。
「ごめんね、久しぶりにあったのに、こんなこと言って」
家にいたくないから、ふらっと外に出たら、昔ちょっとだけ付き合ってた彼がいたのだ。コンビニの菓子パンをおごってもらって、公園にいる。メロンパンを食べきって、立ち上がる。
「パンありがと。もう行く」
「俺は」
歩こうとした私の横で、突然彼が口を開く。
「お前が生きてて、嬉しいけど」
振り返る。真面目な目で彼は、こっちを真っ直ぐに見ている。
(まだ)
涙が出てきた。
(生きてる意味、あった)
辛いけど、まだ光はあるのかもしれない。

4/26/2024, 6:23:40 AM

【流れ星に願いを】

「あ、流れ星」
「なんか願い事とかする?でも早くて無理そうじゃない?」
「分かるーなんで三回言えとかなんだろうねー」
なんて、暗くなってきた道を歩く学生が話しているのを聞きながら、その横を通りすぎる。
学生時代なんて何年前だろう。もう、かなり昔のような、なのに去年ぐらいのような。
きらきらした、嫌なことも楽しいことも辛いことも笑えることも、全部あの頃が一番多かったと思う。
(戻りたい?)
願いを掛けるなら、あの輝く時に。

空を見上げる。田舎だからか、良く見える星空。
星が、尾をひきながら空を駆けた。

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