はじめ

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4/10/2024, 1:17:25 AM

【誰よりも、ずっと】

「ああもう!」
大声を出すと、隣の部屋に迷惑だから出せないけれども、気分としたら叫びたかった。帰宅後早々に、ジャケットと鞄をクッションに叩きつけ、座り込む。膝を抱えて座ると、段々目元に水分が増えてくる。

自信はあった。
昔から憧れていた仕事のコンテスト。人一倍、誰よりもずっとずっと、勉強して自分なりに応用して、個性もそこそこ出して。
選ばれたのは他の人で。

(私よりも、他にも同じようなのあるし個性もないあっちが選ばれるの?何で?)
(自分がやってきた努力の時間は無駄だったの?)
(ただ単に、才能がないだけ?)
頭の中、ぐるぐるしてくる。涙が止まらない。

(よし)
どれだけ泣いたか分からない。でも、座っていたら尻が痛い。だから。
「一人カラオケでも行くか」
そして、隣の部屋を気にせず叫んでくるのだ。
そして、もう一度頑張ってみるのだ。
誰よりも、ずっと。

4/8/2024, 1:39:14 PM

【これからも、ずっと】

目が覚めて、しばし天井を見る。
ゆっくり、右を向けば、少し荒い鼻息の、寝息をたてる彼が寝ている。
花粉症か、何か他のアレルギーか、鼻がつまったまま、深く寝ている彼。
布団から出ている、彼の左手をそっと握る。荒れ気味の肌と、ごつごつした感じ。少し冷えている。
手を握ったまま、自分ももう一度目を閉じる。
(今日も、明日も、これから先も)
こうやって、幸せに眠れるようにと思いながら。

4/7/2024, 2:35:05 AM

【君の目を見つめると】

話したいことかあったのだ。
一緒の部屋にいるだけで、緊張で心臓バクバクして、どうしようもないほどなんだけど、どうしても言いたいのだ。

「で?話って?」
二人きりの部屋の中。外は風が吹き、たまに窓を叩く。
ああ、改めて君の目を見つめると、あまりに綺麗で。その中に自分が写っていることが申し訳ないぐらいの。
「どうした?」
優しいその声を、笑顔を。自分なんかに話しかけてくれた気持ちを。
全てを。
「君のことが」
のどが異常に乾いて、声ががさがさして、それでも、なけなしの勇気を出して、真っ直ぐ目を見て。
「ん?」
窓の外、風が強くなってきた。

4/5/2024, 1:03:10 PM

【星空の下で】

空を見上げる。日差しが強く差し込み、雲が少しあって。
「青空なのは」
理科系が得意な友人が、眼鏡を上げながら言う。
「日光と空気のせい」
「聞いたことはある」
頷きながら、ペットボトルの水を飲み干す。
「んじゃ今私達は、星空の下にいるんだね」
そう言って見上げると、友人はにやっと笑って、
「ロマンチックだね」
「そうかも」

青空の下から、星空を見上げる。

4/4/2024, 2:27:09 AM

【1つだけ】

「無人島に1つだけ持っていくなら?」
「そー」
定番のやつ。俺は正直、この手のやつは面倒なんだが、こいつに訊かれたら仕方なく答えるしかない。
「ナイフとか、火つけられるのとか定番じゃね?」
「面白くないー」
棒状のお菓子を咥えてふくれっ面になるこいつ。俺に面白味を求めるな。
「オリジナリティが欲しいわけ俺は」
「んなら、お前はどうなんだよ」
こいつの手元から、同じお菓子を無断で奪う。あー、とか聞こえたけど気にしない。
「俺ねえ…」
考え出す。学校のとはいえ、俺の机に座るの止めろ、と言おうとしたら、
「んじゃお前で」
「…はあ?」
「お前いたら楽しそーじゃね?」
「俺は物じゃねーよ。後机に座るな」
わりーわりーって、軽く謝るけど机から退かない。また、お菓子を口に運ぶ。ボリボリ。
(確かに)
「まあ、二人なら楽しいかもな」
「でしょ!」
笑顔に絆されて、そんなのも悪くないかも知れない。


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