夜空の音

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3/17/2026, 11:33:53 AM

泣かないよ

『大丈夫?』
友人からのLINEがピコンと光る。
『大丈夫だよ。』
『しんどくない?』
『しんどくないよ、大丈夫。』
大丈夫、大丈夫。そう、自分に言い聞かせるように返事を返す。

彼の笑顔を思い出して、彼の声を思い出して、胸が張り裂けそうになる。
それでも、大丈夫。大丈夫。

大丈夫。
泣かないよ。
そう、言い聞かせながら、私はカミソリを手にしていた。

3/16/2026, 10:41:28 AM

怖がり

私が怖いもの。
暗い廊下。
夜の学校。
虫。
大きな音。
眩しすぎる光。
眠れない夜。
少し離れたところから聞こえる笑い声。
人の目。
自分のことを話すこと。
泣いた顔を見られること。
怖いといつも怯えてることを、知られること。

だから、私は仮面を付ける。
どんな時だって、笑ってみせる。その場に合った表情で微笑む。
いちばん怖いのは仮面に気づかれた時なのかもしれない。

3/3/2026, 11:26:03 AM

ひなまつり

『あかりをつけましょ ぼんぼりに』
私は帰ってきた暗い部屋の電気をつける。

『お花をあげましょ 桃の花』
写真に手を合わせて、私はさっき買ってきた花を隣に置いた。

『五人囃子の 笛太鼓』
何もない空間を、ただただ見つめる。

かつてはそこに、毎年のように五人囃子まで出ていた雛人形は、ここにない。
いつも嬉しそうに飾ってたあの人が、亡くなってから、毎年ここを見つめてしまう。

3/2/2026, 10:38:38 AM

たった1つの希望

「ありがとう。」
授業の度に提出物の回収で、毎回そう言いながら渡してくる彼は、私が好きな人だ。
クラスの中心で辺りを照らすような笑顔の持ち主で、教室の隅で集まる私と違って、眩しい太陽のようだ。
共通点の無さそうな私たちだけど、彼とは幼なじみで、昔はよく公園とかで一緒に遊んでいた。

他の人が回収する時はただ渡すだけの彼は、私が集める時必ずありがとうと言ってくれる。
成長するにつれて会話の無くなった私には、ありがとうと言う彼。
自惚れていいだろうか。
私だけは、特別なのだと。
この気持ちが叶うと、信じていいだろうか。

2/26/2026, 10:59:06 AM

君は今

“君は今なにしてるの?”
頭の中で声が聞こえてくる。
「勉強してる。もうすぐ期末試験だから。」
“そっか、中学生だもんね。”

“君は今なにしてるの?”
また頭の中で声が聞こえてくる。
「部活してるよ。」
“そっか、部活動楽しそうだね。”

“君は今なにしてるの?”
また頭の中で声が聞こえてくる。
「大学の入試の結果発表待ち。」
“そっか、大学生になるんだ。大きくなったね。”

“君は今なにしてるの?”
頭の中で声が聞こえてくる。今日は、少し苛立っているようだ。
「20歳になったから、お酒を飲むんだよ。」
“そっか。”
頭の中の声は、いつものようにそう言った。

その後、
“ずるいね、私は小学生で時間が止まったのに。君は大人になったんだ。楽しかったでしょ、色んな経験したでしょ。お酒の味はおいしい?ずるい、ずるいね。いいなぁ、うらやましいなぁ。”
次々に私を責め立てる声が聞こえてくる。
“ねぇ、なんで私が死んで君が生きてるの?”
私は開けようとした缶チューハイから手を離す。
“代わりに死んでくれたら良かったのに。”
あの子はそんな事言わない。だからこれは私の幻聴でしかない。残された罪悪感から生まれた虚像だ。
それを分かっていながら、この歳までこの幻と生きてきた。
「....私が、死にたかったよ。」

せっかく買った缶チューハイは開けられることなく冷蔵庫へ戻されていた。

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